
| 2008.06.29 | ☆終末期医療 みんなで考える契機に 30日、信濃毎日新聞→ 『後期高齢者医療制度に伴い新設された「終末期相談支援料」が、わずか3カ月で凍結された。きわめて異例の方針転換だ。 自分はどのような終末期医療を望むのか、延命治療を希望するのか-。それを事前に意思表示する「リビングウイル」について、医師らが患者や家族と話し合って文書にまとめると、2000円の診療報酬をつける。それが終末期相談支援料の仕組みだ。 厚生労働省の2003年の国民意識調査では、リビングウイルの考え方に6割が賛成している。にもかかわらず、相談支援料に対しては、高齢者らから猛反発が起きた。人の生き死ににかかわるデリケートな問題を、お金を介在させて後押しした厚労省の無神経さゆえである。 ただ、これで終末期医療をタブー視してはいけない。医療の進歩によって、経管栄養や人工呼吸器など延命治療の選択肢は増えている。本人の意思が分からなければ、いざというときに医師の独断が入ったり、動揺している家族に悔いの残る選択を強いたりすることにもなりかねない。なによりも大事なのは、最期までどう生きたいのか-という患者本人の意思だ。そのために、一人一人が日ごろから終末期の医療について自らのこととして考え、家族と対話していくことが欠かせない。延命治療の選択は、なにも75歳以上に限らない。 本人の意思決定を尊重し、支える環境を整えていくことも、あわせて必要だ。多くの人は、住み慣れた場所で最期を迎えたいと望んでいる。だが、現実には在宅医療に踏み切れず、病院で亡くなっている。 終末期を在宅で過ごすためには、在宅療養や介護サービスの手厚い態勢が前提となる。苦痛を除いて、残された人生の質を高める緩和ケアの充実も求められる。相談支援料のあり方について、厚労省に再検討を求めたい。 相談支援料が導入された背景には、老人医療費が膨らむなかで、終末期の医療費を少しでも抑えたい、という思惑が透けてみえる。筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)などの難病患者や、重度障害者の間には、相談支援料が「無言の圧力」となって、延命措置を望まない-と意思表示せざるを得ない状況に追い込まれるのではないかという懸念も広がっている。 いのちにかかわる選択を、診療報酬で画一的に促すやり方はなじまない。患者本位の仕組みを、時間をかけて探るべきだ。』 . |
| 2008.06.24 | ☆骨太方針原案 社会保障財源を明確に示せ 24日、讀賣新聞→ 『社会保障を支える確かな財源を示さなければ、日本経済の将来展望を描いたとは言えない。 経済財政運営の指針となる「骨太の方針2008」の原案がまとまった。 原案は、歳出改革だけでは対応しきれない社会保障などの負担増について、前年と同様、「安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りは行わない」と明記した。消費税率引き上げの必要性を暗に示した形だ。 だが、消費税を含む抜本的な税制改革について「早期に実現を図る」にとどめ、具体的な展望を示さなかった。 先進国で最悪の財政を立て直し、これから急増する社会保障給付に対応できる制度を再構築せねばならない。消費税率引き上げの必要性について、もっと明確に示すべきではなかったか。 もちろん、歳出削減による財政規律の維持も重要だ。歳出について「最大限の削減を行う」方針を堅持したのは妥当だ。予算の無駄遣いは後を絶たない。増税に国民の納得を得るためにも、歳出削減の手を緩めてはならない。 とはいえ、歳出の削減だけで問題は解決できない。 基礎年金の改革は、社会保険方式の修正案で5兆円台半ば、消費税率にして2%強の新たな財源がいる。全額税でまかなう方式なら、4・5〜13%の税率アップが必要となる。 医療給付は2025年度までに1・7倍、介護給付は2・6倍に膨らむ。この期間の国民所得の伸びは1・4倍にとどまる。給付の増大を、税の自然増収ではまかないきれない計算だ。 深刻な医師不足や少子化への対応、国益を守るための政府開発援助(ODA)の戦略的活用など、予算を増やすべき分野もある。 過激なダイエットが体に悪いように、歳出削減も過ぎれば、副作用が出る。 医療や介護の現場は、過酷な労働と低賃金で疲弊しているが、報酬のアップもままならない。 社会保障費は07年度から2200億円ずつ、5年で計1・1兆円削減される。原案は前年と同様、事情によっては削減額の一部を後年度に回す余地があるとした。しかし、歳入増のあてがなければ、安易な前借りは許されない。 一般に「増税よりも歳出削減が先」という主張はうけがいい。それをタテに、消費税率引き上げという「苦い薬」をためらい続け、改革を先送りすることがあってはなるまい。』 . |
| 2008.06.24 | ☆医師増員 偏在解消を急ぐべきだ 24日、沖縄タイムス→ 『地域の深刻な医師不足に対処するため政府は、医師数の「抑制」という従来の方針を改め、計画的に「増員」していく考えを打ち出した。四半世紀ぶりの路線転換である。 医師が過剰になったり、医療費が増えたりすることを懸念して政府は一九八二年、「医師数の抑制」を閣議決定した。 医師不足が社会問題化したことを受けて二〇〇六年、一部大学医学部の定員増を認めたが、その時にも「引き続き医学部定員の削減に取り組む」との一九九七年の閣議決定は変えていない。 今回、九七年の閣議決定を見直し、「抑制」から「増員」への路線転換を打ち出したことは、医師不足解消に向けて政府が本腰を入れて取り組む姿勢を示したものと受け止めたい。むしろ遅過ぎたぐらいだ。 地域医療をむしばんでいる医師不足には、さまざまな要因が複合的に絡んでいる。 若い医師は先端の技術を学びたいという意向が強く、離島や辺地には行きたがらない。過重労働を強いられる病院勤務に嫌気がさして、条件のいい開業医に変わる医師も後を絶たない。訴訟リスクを抱える産科や小児科などは、敬遠されがちだ。 二〇〇四年に新人医師の臨床研修制度が義務化され、都市部への研修希望が集中した。研修医が減った大学病院は過疎地などに派遣していた医師を引き揚げた。 問題なのは、「医師の偏在」が急速に進んだ結果、必要な医療が受けられないという深刻な現象が各地で起きていることだ。 県議会の二月定例会で仲井真弘多知事は「女性医師の再就業の支援や勤務環境の改善を図り、中長期的な医師確保につなげていきたい」と答えた。 医師不足が深刻な産科や小児科の女性医師の中には、子育てと仕事の両立に悩んでいる人が少なくないという。しばらくの間、「非常勤で、短時間働きたい」と希望する女性医師に対しては、多様な勤務形態を認めるなどの柔軟な子育て支援策が欠かせない。 琉球大学医学部の定員を増やしても、それが直ちに県内の医師不足の解消につながるわけではない。新人医師が、医師不足を訴える離島・辺地や産科・小児科などに勤務して初めて、医師不足解消に役立つのである。 医師不足で困っている地域や医師の少ない診療科目に新人医師を誘導していくためには、魅力的な施策を打ち出す必要がある。 福田康夫首相は、社会保障費の歳出抑制路線は今後も堅持するという。医師増員のための財源はどこから捻出するつもりなのだろうか。政府内の調整は進んでいないようだ。 財源問題が詰められていないため、どのくらい医師を増やしていくのかも、まだはっきりしない。 政府は社会保障費の伸びを年二千二百億円ずつ圧縮する目標を掲げ実施してきたが、抑制路線を維持するのはもはや困難だ。 医療費の削減が、結果として「医療崩壊」を招いている現実を直視しなければならない。』 . |
| 2008.06.23 | ☆医療立て直しの第一歩 医師増員 23日、中日新聞→ 『政府が大学医学部の定員削減を定めた閣議決定を撤回し、増員を決めたことは当然である。特に病院の医師不足で深刻な医療崩壊を招いただけに遅すぎたぐらいだ。早急に具体化を図る必要がある。 医師養成数について政府は一九八二年、削減することを閣議決定した。九〇年代に入って既に離島や僻地(へきち)などでの医師不足が指摘されていたのに、医療費抑制の一環として九七年の閣議で削減方針を再度駄目押しする過ちを犯した。 この結果、人口千人当たりの医師数は二・〇人とベルギーの四・〇人、独仏やスウェーデンなどの三・四人をはるかに下回り、経済協力開発機構(OECD)の中で二十七位(二〇〇四年)にまで下がってしまった。 過度な医療費抑制策が招いた結果を真摯(しんし)に反省すべきだ。 具体的にいつからどれくらい定員枠を広げるのかなどを早急に詰め、実行してもらいたい。 政府が医師養成の増員へ方針転換したのはいいが、一人前の医師が育つのに十年以上かかるといわれているだけに、すぐに医師不足が解消するわけではない。 さらに、養成数を増やしても、その分が将来、離島や僻地など地方へ赴くとは限らない。 医師養成数の増加という長期的な政策とは別に、当面の対策も練り直さなければならない。 現在でも医師数は毎年四千人ほど増えているが、それでも地方の医師不足が深刻化しているのは、医師が都市に集中するためだ。 地方に赴任しやすくするには、関連する医療機関同士で交代制を敷き、地方勤務を終えたあとの復帰先を確保することが必要だ。離島を多く抱える沖縄県は以前から県立中部病院を中心に交代勤務体制を整えており、参考になる。 医師が病院勤務をやめ、開業する背景には病院勤務の厳しい労働環境がある。この状況を正すには、開業医寄りの診療報酬を病院重視の体系に改めなければならない。四月の診療報酬改定で多少改善されたが、まだ不十分だ。 医療従事者の業務範囲の見直しも必要だ。例えば能力の高い看護師・助産師の裁量権を拡大し、血液検査など医療行為の一部を任せるようにすれば、医師の負担は軽減され、難しい症例に専念でき、医療の質の向上にもなる。 看護師など他の医療従事者も過酷な労働に耐えかねて離職が後を絶たない。医師同様に労働環境や待遇の改善を図り、国民が安心できる医療を目指したい。』 . |
| 2008.06.23 | ☆医療ビジョン 定員増だけで事足りぬ 23日、北海道新聞→ 『医師不足の解消に向けた「安心と希望の医療確保ビジョン」を厚生労働省がまとめた。 大学医学部の定員増が柱だ。地方を中心にした深刻な医師不足を考えると、医師数の増加対策は当然で、むしろ遅すぎたくらいだ。 ただ、医師を増やしただけでは問題は解決しない。医師を過不足なく、全国にどう行き渡らせるかという視点が必要だろう。ビジョンにはそれが欠けているようにみえる。 大学医学部の定員は、一九八〇年代前半の約八千三百人をピークに減少に転じ、二〇〇七年には七千六百人にまで減った。医師の需要予測をもとに、政府が一九八二年に医師の抑制方針を、九七年には削減方針をそれぞれ決定したためだ。 確かに、医師の数自体は、毎年三千五百人から四千人のペースで増えている。 それでも医師不足と言われるのは、医師が大都会などでの開業医に偏り、地方の中核病院などに勤務する医師が必要数を満たしていないからだ。道が最近まとめた調査結果でも、道内の病院の36%が「緊急に常勤医が必要」と答えている。 勤務医不足の背景にあるのは、宿直明けの通常勤務など、多くの医師が過酷な勤務を強いられていることだ。厳しい勤務環境から、病院を退職し、開業に転じる医師が増えている。それが、勤務医の労働条件をさらに悪化させている。 打開策として、ビジョンは「非常勤医師の活用により地域医療を支える多様な勤務形態の導入」をうたうが、そもそも、こうした出張医となる人材すら足りないのが、大都会から離れた地方の実情だ。 不足がとくに目立つ小児科や産科への目配りも薄い。たとえば、産科について、医師との連携で助産師が正常分娩(ぶんべん)を扱えるよう、院内助産所などを導入するとしている。 だが、地方には医師の辞職で産科が休診に追い込まれた病院は少なくない。連携すべき医師が不在なのだ。厚労省は地方の実態を十分に把握しているのだろうか。 医師不足に拍車をかけたのは〇四年に始まった新臨床研修制度だ。新卒医師の研修先が、都市の民間病院に集中、出身大学が医師確保のため、地方の自治体病院などに派遣していた医師の引き揚げを始めた。 この連鎖を断ち切らねばならない。ビジョンでは是正策として「医師不足が深刻な診療科や地域医療への貢献を行う臨床研修病院等を積極的に評価」「研修医の受け入れ数の適正化」を掲げる。 これをどう肉付けしていくか。地方の実態に沿った検討が急務だ。』 . |
| 2008.06.02 | ☆介護報酬 待遇改善へ見直しを 2日、信濃毎日新聞→ 『在宅介護を支える柱となる、訪問介護サービスの事業所が減っている。いまの介護保険制度では採算を確保しにくいことから、事業所の縮小や廃業が進んでいるとみられる。 介護事業所や福祉施設の人手不足は、慢性化している。介護労働者の離職が止まらないからだ。仕事の大変さに比べて、賃金が低く、やりがいを見出しにくい。介護保険で事業者に支払われる報酬は、膨らむ給付費を抑えるため、これまで2回、引き下げられた。その結果、高齢化で介護を必要とする人は増えているのに、支える人材は流出し、事業者が撤退していく。これでは制度の基盤が崩れてしまう。2009年度に3回目の報酬改定が予定されている。高齢社会を支える人材を、劣悪な労働環境に押し込めていては、制度の健全な運営は望めない。サービスの質を確保するためにも、国は介護職の待遇改善に向けて、報酬の在り方を見直すべきだ。 国は06年度の報酬改定で、要介護度の軽い人に対して、訪問介護のうち料理や掃除などの「生活援助」サービスの利用を制限した。この影響に加えて、人手不足などによる経営難が、働く人の状況を厳しくしている。長野県内のある訪問介護事業所は、男性ホームヘルパーの結婚退職が相次いでいる。家族を養えるだけの収入がないため、見切りをつけざるを得ないという。 厚生労働省の06年の調査では、男性ヘルパーの平均賃金は月23万600円。福祉施設の介護員は、さらに低い。全産業の37万2000円と大きな開きがある。介護労働者は非正規雇用が少なくない。離職率が高いのも特徴だ。 この夏にはインドネシアから、看護師の介護施設などへの受け入れが始まる。低賃金・重労働の現場を、外国人労働者に下支えさせることにもなりかねない。 今の国会で「介護従事者処遇改善法」が全会一致で成立した。中身は、来年4月までに「賃金をはじめとする処遇の改善」の必要があると認めるときは「必要な措置を講ずる」との1条だけ。具体策を早急に詰めなくてはいけない。舛添要一厚労相も「プロであるべき介護士の処遇が良くないのは問題だ」と発言、報酬の引き上げを目指す考えだ。 そうあるべきだ。ただ、その際、増えた分の報酬が労働者の人件費にどう配分され、一定の給与水準を確保できるか、がカギになる。知恵を絞ってもらいたい。』 . |
| 2008.06.01 | ☆社会保障予算 抑制は限界ではないか 1日、北海道新聞→ 『ここまで医療や福祉などの現場に深刻な影響が出ているのだから、社会保障費の抑制目標が行き過ぎているなら思い切って見直してはどうか。 来年度予算の基本方針を定める「骨太の方針」に、社会保障費の自然増分を毎年二千二百億円抑制する政府目標を盛り込むかどうかで、与党内の対立が激しくなっている。 自民党の厚生労働関係合同部会が後期高齢者医療制度への批判を受け、来年度は抑制を見送るべきだと決議したのがきっかけだ。 福田康夫首相は政府目標を維持する方針を変えていないが、政府内からも「抑制は限界に近い」との声が出ている。 むろん社会保障費とて聖域ではなく、いたずらな膨張は許されない。だが、抑制のしすぎが医師不足による地域医療や救急医療の崩壊の一因と言われているのだから、すぐにでも改めるべきだろう。 国の社会保障費は高齢化に伴い毎年約八千億円ずつ増え、本年度は約二十二兆円に達している。 抑制の政府目標は小泉純一郎政権時代の二〇〇六年に作られた「骨太の方針」に盛り込まれた。 国債関係費を除いた歳入と歳出の差である基礎的財政収支(プライマリーバランス)を一一年度に黒字化する-。 その方策の一つとして掲げられたのが社会保障費の自然増分を五年間で一兆一千億円圧縮する計画で、単年度では二千二百億円になる。 この数値目標がいまも生きているのだ。政府内では来年度も雇用保険の国庫負担削減などで歳出を抑制する案が浮上している。雇用の改善で積立金に余裕が出てきたためだ。 だが、こんな場当たり的な対応を続けていては、いずれ行き詰まってしまう。 医療や福祉の水準をこれ以上落とさないためにも、過去の数値目標に縛られることなく、もっと柔軟に対応していい。 その際、忘れてならないのが基礎的財政収支を黒字化するという目標の堅持だ。 なし崩し的に歳出が増えるようなことがあってはならず、限られた予算の中でやりくりし、優先順位をつけて配分することがますます重要になってくる。 首相は道路特定財源を来年度から一般財源化する方針を表明している。道路族議員や国土交通省の抵抗を押し切って、どこまで医療や福祉に回せるかも大きな課題だ。 社会保障の維持と財政再建を両立させつつ、国民の生命や安全にかかわる部分にはきちんと予算をつける必要がある。』 . |
| 2008.05.22 | ☆介護職の人手不足 早急な待遇改善が必要 22日、秋田魁新報→ 『福祉サービス事業で、介護にかかわる人手不足が深刻化している。低賃金や過酷な労働に耐えかねて離職者が増加しているためだ。スタッフが足りず、新たな利用を断るケースも出ている。サービス水準の低下を招かないためにも、国は早急に待遇改善などに取り組むべきだ。 介護現場が人手不足となったのは、事業者に支払われる報酬単価が2006年度の制度改正に伴って引き下げられたことが大きく影響している。これによって業界の給与水準が下がり、人材が他産業に流出。さらに、事業所の採算悪化によって新規採用もままならないという悪循環に陥りつつある。 県内でも人材確保に四苦八苦する事業所が目立ち始めた。県社会福祉協議会の福祉保健人材・研修センターが昨年公表した調査結果では、「介護職」の2235人のうち、06年度中に退職した人は299人(13・4%)。このうち勤続1年未満で辞めた人は4分の1の79人を占めている。 また、介護報酬が抑えられたため、経営の見通しを立てにくい事業所側は正規採用を控え、人材不足をパートで補おうという姿勢が顕著。07年度の月別有効求人倍率も全業種で平均0・6倍前後だったのに対し、介護職は1倍以上の高い水準で推移している。こうした状況について「欠員が出れば資格を持っていなかったり、全くの未経験者のパートで補うケースが多く、このままでは利用者のニーズに十分対応できなくなる」と危惧(きぐ)する関係者も少なくない。 全国的には、人手不足のしわ寄せが利用者に及ぶケースも頻発するようになった。「障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動実行委員会」が国内の約70事業所を対象にした調査では、06年度以降に6割以上がスタッフの賃金を引き下げ、「新規の介護利用を断らざるを得なかった」との回答も4分の3以上に上った。必要なサービスが受けられないとあっては「何のための介護保険制度化か」といった不満の声が噴出するのも当然だろう。 こうした局面の打開を狙ってか、経済連携協定(EPA)に基づいて7?8月にインドネシアから介護士と看護師が来日することが先日決まった。介護業界からは歓迎の声が上がるが、日本介護福祉士会など関係団体は「コミュニケーションが一番大事な介護は、外国人には難しいのではないか。国内で人材を確保できるような待遇改善が先だ」と疑問視する。十分な議論がないままの外国人受け入れは、介護現場に混乱を生じさせかねない。 今年秋には、3年に1度の制度改正論議が本格化する。高齢化の進展に伴って介護ニーズが増えている中、制度の基盤となるサービスの質が低下する事態は避けなければならない。財政再建の下でも政府は人材確保策に本腰を入れるべきだ。』 . |
| 2008.05.19 | ☆介護保険 安易に切り捨てずに 19日、信濃毎日新聞→ 『介護保険制度は本年度が見直しの年にあたる。介護給付費の抑制を目指す財務省は、要介護度の軽い人のサービス利用を制限した場合、保険料や国庫負担がどれくらい減るかという試算を、財政制度等審議会に示した。今後、厚労省と検討していく際の資料になる。 試算は3通りある。「要支援」1、2と「要介護」1-5の計7段階に分かれた要介護状態の区分のうち、「要支援1」から「要介護2」までの「軽度」の人について、▽制度から外す▽家事支援など生活援助サービスのみの人を外す▽自己負担を現在の1割から2割に引き上げる-だ。 介護保険の台所事情は苦しい。本年度予算の介護給付費は、2000年度に制度が始まった時の2倍以上、6・9兆円となった。国の財政が厳しい中で、給付の伸びの抑制は、切実な課題だ。 半面、財政事情に目を奪われて、直ちに見直しに走るのは危険だ。介護を必要とする人を切り捨て、制度の理念をゆがめるおそれがある。慎重に臨んでほしい。 「要介護2」の人は、介護サービスの支えがなければ、実際、暮らしていけない。自力で歩くことができなかったり、認知症が始まっていて判断能力が衰えていたりする状態にある。 長野県内も核家族化が進み、認知症でも1人暮らしをしているお年寄りや、夫婦ともに要介護状態の老老世帯が珍しくない。生活援助サービスは、生きていくための“命綱”にほかならない。 こうした人たちへの給付を減らすのは、介護の不安や負担を社会全体で支える、という制度の理念に反する。 介護を受けている人の多くは医療の助けも要る。後期高齢者医療制度(長寿医療制度)も始まっている。介護保険で自己負担を重くすれば、医療と二重の負担増を強いられる人も出てくる。 より自立の状態に近い「要支援1」と「要支援2」を、介護保険の枠内に置くべきかどうかは検討の余地がある。だが、この区分も、介護予防の観点から、3年前の見直しで新設されたものだ。あまり目まぐるしく変えては、利用する人が戸惑ってしまう。 介護保険の対象となる高齢者は増え続ける。制度を健全に維持するために、高齢者に応分の負担を求めるのは、ある程度やむを得ない。ただし、見直し議論にあたっては注文がある。それは、中長期にわたって持続可能な制度への見取り図を、まずは示すことだ。』 . |
| 2008.05.18 | ☆アジアの優しき人々 週のはじめに考える 18日、中日新聞→ 『この夏から医療や介護の現場に働くインドネシアの人々の姿がみられそうです。外国人への門戸開放の一歩。高齢社会日本の希望と不安が交錯します。 高度経済成長に入る直前の昭和三十年代の東京の下町の「夕日町三丁目」とそこに暮らす人々を描いた二〇〇五年の映画「ALWAYS 三丁目の夕日」は記録的な大ヒットでした。 美化しすぎのきらいがなきにしもあらずですが、木造の住宅と商店、都電やオート三輪、三種の神器だったテレビなどが懐かしさを誘いました。売れない純朴な青年作家と少年の共同生活や小料理店のおかみとの不器用な恋、それを見守り励ます近隣の人々の物語は心をほのぼのともさせました。 言葉の壁は越えられる 貧しくとも心ゆたかで温かなコミュニティー。人々への思いやりはどんなに時代が変わろうと、変わらない大切なものだというのがメッセージなのでしょうか。昨年の続編も前作に負けないほど好評だったといわれます。 残念ながら、夕日町三丁目とそこでの人々の悲喜こもごもの暮らしはコミックマンガやスクリーンの中に閉じ込められ、日本の現実の世界から消えてしまいましたが、東南アジアの国々では、今なおいたるところに夕日町三丁目と心優しき人々が存在しています。 混雑したバスや運河を渡る舟の中では、若い娘さんがごく自然に席を譲ってくれたり、手を引っ張って岸へ引き上げてくれます。ワシントンからバンコクへ国際会議の取材にきた同僚が涙を流さんばかりに感激したこともありました。 同僚記者の仕事が一段落するタイミングを見はからって会議内容を報告する取材助手の女性の気くばりに感心してのことで、何事も自己中心の米国では相手の都合など考えてくれないのだ、というのでした。 避けよ最悪シナリオ 同じ農耕社会。稲作文化や仏教儒教を共有したせいでしょうか、タイでもカンボジアでもベトナム、インドネシア、ミャンマーでも優しき気づかいの人々がいて、取材で「言葉の壁を越えられる」との思いを強くしたものでした。 日本はその東南アジア各国との間で、経済活性化のための経済連携協定(EPA)を結び、十六日の国会承認によって、この七月にもインドネシアから看護師、介護福祉士の第一陣が来日する見通しとなりました。 協定での受け入れ枠は二年間で看護師四百人、介護福祉士六百人の千人。半年間の日本語研修などのあと病院や施設で働くことになりますが、専門的、技術的分野に限定していた外国人労働者受け入れをそれ以外に広げるのは初めてで、門戸開放の転換点とも。フィリピンからも看護師ら千人の受け入れを決定、タイ、ベトナムからも受け入れを求められています。 日本社会の高齢化は急激で、厚生労働省は、要介護認定者は二〇〇四年の四百十万人から一四年には六百万人以上となり、介護労働者は、十年で百万人から最大百六十万人に増やす必要があるなどの数字をはじき出しています。 少子化と労働人口の減少で、介護もいずれは外国人に頼る時代がくるのかもしれません。気くばりの東南アジアの人々にはその適性があるかもしれません。しかし、介護現場を現状にしたままでの門戸開放は問題が大き過ぎます。限定的とされる今回のインドネシアからの受け入れでさえ、両国の未来にとって最悪のシナリオとなる恐れなしとはいえません。 二〇〇〇年四月スタートの介護保険制度は、制度存続の危機に直面しています。矛盾が噴出、とりわけ財政の悪化や二度の介護報酬引き下げは、介護現場への重労働・低賃金のしわ寄せとなって、大量離職となっているからです。 〇五年調査で離職率20%、離職者は二十万人。そんな介護現場への外国人看護師、介護士は、重労働・低賃金労働固定化の道具として利用されかねません。労働者同士が反目する惨状を招きかねません。若者たちが希望と情熱をもち、資格のある潜在看護師、介護福祉士七十五万人が働ける職場であってもらわなければ、われわれ国民が困ってしまうのです。 感謝を手厚い待遇で 道路や河川、ダムなどの公共事業に比べて社会保障は軽視されてきました。年間に徴収される税、社会保険のうち社会保障への還元が北欧並みの七割といかないまでも四割では介護労働者への待遇改善には回りません。財政の再配分そのものが見直されなければなりません。道路よりも安全・安心、社会保障制度充実の時代です。 熱心な介護労働への心からの感謝と手厚い待遇なくして外国人労働者にも幸せは届きません。』 . |
| 2008.05.14 | ☆後期高齢者医療 実態調査と総点検を急げ 13日、讀賣新聞→ 『新しく始まった後期高齢者医療制度への風当たりが強い。 「後期高齢者」という呼称を含め、配慮に欠ける面が目立つことは確かだ。主に75歳以上を対象とする大きな制度変更なのに、厚生労働省も自治体も、十分な準備と説明を怠っていた。 さらに厚労省は、従来の制度と比べて、どの程度の人が負担増あるいは負担減となるのかについても、あいまいな見通ししか示すことができない。これでは高齢者が憤るのは当然である。 政府・与党は、新制度の趣旨を丁寧に説明するとともに、実態調査を急ぎ、問題を総点検する必要があろう。 これまでも75歳以上の人は主に市町村の国保に加入しながら、老人保健制度の枠組みに入り、その医療費が膨らんだ分は企業の健保などが拠出金で支援していた。 ただし、現役世代がどれだけ負担するかが明確ではなかった。後期高齢者の医療費が必要以上に膨らまぬよう、誰が責任を持って取り組むかも判然としなかった。 新制度は、あいまいなまま融通しあってきた高齢者医療費の会計を独立させ、都道府県単位の組織に運営責任を持たせた。従来の市町村単位より広域化したことで、保険財政は安定する。 所得の多い高齢者には、応分の負担を求める仕組みも盛り込まれた。現役世代には、自分の保険料のうち、どれだけ高齢者医療にあてられたかも明示される。 負担のルールを明確にしたことが、高齢者に冷たい制度と受け取られているようだ。 しかし、負担と給付の関係をはっきりさせることで初めて、高齢者と現役世代のそれぞれに求めうる保険料の限界も明確になる。そこから先の医療費、そして社会保障費全体の財源をどうするか、という議論につながる。 新制度の全体的な方向は、超高齢時代に沿っている。だが、細部では問題が多い。 新制度の保険料算定式は複雑で理解するのは難しい。分かりやすく工夫した説明がないために、負担が増えた人は不満と不信を募らせている。 低所得者や障害者向けに、自治体が独自に実施していた減免措置が新制度移行を機に打ち切られ、困惑している人がいる。 年金からの保険料天引きを、これまでの負担に上乗せして徴収されているという誤解も根強い。 説明を尽くし、必要な救済策を講じることが大事だ。』 . |
| 2008.05.14 | ☆社会保障費の抑制 もう限界ではないのか 13日、中國新聞→ 『いくら財政再建をめざすためとはいえ、社会保障費の増大分を毎年二千二百億円も削って、国民の健康や老後の安心が守れるのだろうか。医師不足など地域医療の崩壊が進む中で、政府の方針はもう限界と言わざるを得ない。 舛添要一厚生労働相は「抑制は限界だ」と現状を述べ、自民党の伊吹文明幹事長らも見直しの必要性を唱えている。福田康夫首相も「難しい段階に来ている」との認識を示す。 しかし、「小さな政府」を掲げる財務省はおいそれと受け入れそうにない。現に額賀福志郎財務相は抑制を続けることを言明している。来月にも閣議決定される「骨太の方針2008」に向けて、政府・与党は難しい調整を迫られることになりそうだ。 社会保障費の抑制見直しがここにきて政権維持のキーワードとなったのは、医療や介護の現場にもたらされた混乱と疲弊がある。七十五歳以上を別枠にした後期高齢者医療制度、療養病床の大幅削減、産科や小児科医の不足、介護報酬切り下げによる人材難…。国は財政再建を名目に社会保障費関連の歳出を抑えてきたが、国民の間には大きな不満が残った。 宙に浮いた年金問題でまず「ノー」を突きつけたのが安倍政権下の昨年七月の参院選だ。自民党は参院の第一党の座を奪われた。後を継いだ福田内閣は、今年四月の衆院山口2区補選でも敗れた。足を引っ張ったのは、事前の説明が不十分のため混乱した後期高齢者医療制度だった。 この制度については、自民、公明両党が、一部高齢者の保険料の免除を十月以降も延長する検討に入った。 社会保障費の抑制は小泉内閣時代の「骨太の方針2006」にさかのぼる。国・地方の基礎的財政収支を二〇一一年度で黒字にするとして、〇七年度から五年間で歳出を計一兆一千億円圧縮する計画だ。 それだけに、財務省には与党の要求でも譲れない事情がある。額賀財務相は今後の経済財政運営の基本的な考え方として、骨太の方針の改革姿勢は変えないという構えだ。財務省内には、社会保障費でたがが外れれば、なし崩し的な歳出増になると警戒心が強い。 見直し論浮上の直接の理由は、本年度予算に織り込まれた二千二百億円抑制の実現が危ぶまれているためだ。政府は圧縮分のうち約一千億円について、政府管掌健康保険(政管健保)の国庫補助を健康保険組合などに肩代わりさせる特例措置で捻出(ねんしゅつ)する計画だった。ところが、「ねじれ国会」で成立のめどが立っていない。 福田内閣の支持率が19%と低落していることもあり、与党内には「これでは衆院選に勝てない」との声が強まっている。社会保障政策の立て直しなしには、政権の浮揚はあり得ない。ただ、小手先の見直しに終わらせてはなるまい。給付と負担をどうするのか、社会保障の将来ビジョンを国民に明確に提示すべきだ。 』 . |
| 2008.04.26 | ☆高齢者医療 出発点から考え直せ 26日、信濃毎日新聞→ 『4月からスタートした後期高齢者医療制度(長寿医療制度)に、お年寄りの怒りが収まらない。 保険料の年金天引きに対する反発はとりわけ強い。この問題は27日投開票の衆院山口2区補選の争点にも浮上した。与党内からも見直し論が出ている。小手先の負担軽減策では、展望は見出せない。制度の根幹に立ち返って、高齢者の命を支える仕組みのあり方を洗い直したい。 新制度のねらいは、世代間の負担を見直すことにあった。75歳以上の人たちを別枠の医療保険にして、所得に応じて全員に保険料を支払ってもらう。患者の自己負担を除いた医療費の1割を、この保険料で賄う。残りの4割は現役世代の保険料からの支援金、5割が公費だ。給付と負担を明確にすれば、コスト意識が生まれ、医療費の抑制にもつながる-というわけだ。新制度の対象者には75歳以上のほかに、65歳以上の寝たきりの人なども含まれる。 医療を最も必要とする人たちを、ひとくくりに切り離すことが適切なのか、そもそも疑問がある。社会保険は本来、リスクをみんなで分かち合う仕組みだ。対象とする集団は、大きくすればするほど安定度が増すはずだ。 75歳以上の医療費は、2006年の11兆円から25年には25兆円に膨らむ推計だ。保険料は現役世代の人口が減ることによっても上がっていく。厚労省の試算では、全国平均でいま月約6000円の保険料が、7年後には月額でさらに1000円強増える。 お年寄りの大半は、年金から保険料が天引きされる。介護保険料も天引きだ。物価高で生活必需品は、軒並み値上がりしている。これ以上支出を抑えるには、医者にかかるのを我慢するしかない-。お年寄りがこの制度から「老人切り捨て」のメッセージを読み取るのも、無理はない。 だからといって、元に戻せばよいわけでもない。高齢者の医療費を国保と現役世代に頼る従来の制度が立ちゆかないのは明らかだ。何らかの形で高齢者が負担していく仕組みは避けられない。 だれもが安心して医療を受けられる国民皆保険を維持しながら、将来にわたる少子高齢化に耐えられる制度を、どう構築するか。 民主党など野党は、制度廃止を目指して政府を追及する構えだ。遅ればせながら、白紙に戻すことも視野に入れつつ、今国会で議論をしっかり深めてもらいたい。』 . |
| 2008.04.19 | ☆社説:安心の仕組み 医療費の抑制はもう限界だ 19日、毎日新聞→ 『保険証があれば、いつでも、どこでも医者にかかることができる。しかも世界で最高水準の医療が、それほど大きくない負担で受けられる。日本の医療が世界から高い評価を受けてきたゆえんだ。 しかし、誇りとしてきた安心の医療制度がいま、音を立てて崩れつつある。小泉純一郎内閣の「小さな政府」政策には功罪があるが、医療費抑制策によって医療制度は根幹から揺らぎ始めた。 医療崩壊ともいえる現象が一気に噴き出したのだ。小児科や産科の医師が不足し、救急医療の現場では患者がたらい回しにされるケースが相次いでいる。病院経営の赤字が膨らみ、勤務医は過酷な仕事に疲れ果て、開業医をめざして病院から去っていく。少子化対策が声高に叫ばれるのに、現実には医療ミスの裁判を恐れて産科医が減っている。 医療費の削減を狙った後期高齢者(長寿)医療制度は高齢者を落胆させ、強い怒りが広がった。高齢者の怒りは国の政策への痛烈な批判と受け止めなければならない。政府の説明不足もあるが、背景には「医療費カットは高齢者切り捨てだ」という不信感がある。政府は高齢者の不信や不安を取り除くためにも明確なメッセージを送るべきだ。 高齢者の医療費は現役世代の5倍かかる。年間30兆円を超す医療費の3割以上は老人医療費が占める。高齢化が進めば、医療費が増えるのは自然の流れだ。一方、少子化によって現役世代が減るため世代間の仕送り方式で運営される社会保障制度の基盤が崩れるのは目に見えている。 政府の医療費抑制策に国民は一定の理解を示したが、実行されてみると、さまざまな問題が表面化した。厚生労働省は診療報酬の見直しをテコに日本医師会の力をそごうとした。だが、診療報酬の配分を開業医から勤務医に移すための見直しは進まず、医療費抑制のしわ寄せは病院経営や勤務医にのしかかった。 加速する医療崩壊の実情をみると、医療費抑制はもはや限界に達したと言わざるをえない。日本より早く同じ医療崩壊が起きた英国では医療費を増やす政策に転換し、危機を乗り越えつつある。こうした経験にも学ぶ必要がある。 国は医療費抑制の功罪を再点検し、医師不足・偏在対策など必要な所には増やすべきだ。検査漬けなどムダを省くことも重要だが、それ以上に抑制策によって疲弊した医療の立て直しが必要だ。早急な医師の増員や、地域に計画的に配置するための施策を取ることも急いでほしい。これは日本医師会をはじめ医師や医療機関の協力がなくてはできない。医師の団体は指導力を発揮して、医師不足・偏在対策に手を打ってもらいたい。』 . |
| 2008.04.19 | ☆グループホーム 透明性高め不安をなくせ(社説) 19日、山陽新聞→ 『社会の高齢化が進む中、不安が募る事態が表面化した。津山市のグループホームで、認知症の入所者に対し虐待があったとされる問題である。詳細な経緯などは不明確な点が多く、早期の真相究明が望まれる。 市によると、施設で生活していた高齢の女性五人の体重は、入所時などから一年半以内に一七―四・五キロ減っていた。食事などの栄養管理がきちんと行われていなかった疑いがある。 市は、入所者の衰弱を把握しながら適切な対応を怠ったことが虐待に当たると判断し、介護保険法に基づき施設を運営する法人の事業者指定を今月末で取り消す処分を下した。 高齢者虐待による介護施設の指定取り消しは全国初という。法人の施設運営は不可能となり、入所者は退去を余儀なくされる。処分に対し、法人側は事実無根として不服申し立てなど徹底的に争う姿勢を示す。 両者の主張は食い違うが、なぜ指定取り消しにまで発展したのか。二〇〇六年秋ごろには入所者の家族らから苦情などが市に寄せられていたという。市は状況を確認したり改善を求める指導を続けたとするが、結局今年三月の監査で虐待に当たると認定した。市のチェックや指導などに問題はなかったのか、検証が必要だ。 グループホームは認知症の高齢者が、少人数で介護スタッフとともに家庭生活の延長のような形で暮らす。症状の進行が緩やかになるとされ、全国的に急増している。 しかし、小規模なだけに「密室性」を懸念する声は少なくない。不安を解消するためには、情報開示などで運営の透明性を高めることが不可欠だろう。施設関係者や行政、医療機関などが連携を強め、積極的な対応が求められる。』 . |
| 2008.04.16 | ☆年金改革読売案 医療と介護も視野に入れて 16日、讀賣新聞→ 『日本の社会保障制度はこのままでは、ごく近い将来に必ず立ちゆかなくなるだろう。 そうした認識に立ち、読売新聞は、年金改革の具体案を財源の在り方とともに提言する。 これをたたき台の一つとして、国民的議論が広がり、深められ、社会保障改革が着実に前に進むことを願う。 読売新聞の年金制度改革案は、現行の「社会保険方式」を基本的に維持しつつ、その不備や弱点を大幅に改良するものだ。 ◆最低保障年金を創設◆ 社会保険方式は、公的年金が国民相互の助け合いであることを前提とし、老後に備える各々の努力を年金額に反映できる。その長所を生かしながら、老後の年金を一定レベルで保障する仕組みを盛り込んだ。 具体的には、受給資格を得られる最低加入期間を、現行の25年から10年に短縮することで、ほぼすべての国民が、無理なく年金制度に参加できるようにする。 月5万円の最低保障年金を創設し、基礎年金の満額を月7万円に引き上げる。障害基礎年金も連動して増額するため、障害者の所得保障にも資する。 無年金・低年金の人はほとんどいなくなり、生活保護に追い込まれる高齢者はかなり減るだろう。介護保険や後期高齢者医療制度の保険料が年金から天引きされる際の負担感も、軽減するはずだ。 子どもが3歳になるまで、親の基礎年金の保険料は無料にする。若い親たちを年金制度で支援することは、少子化対策としても有効ではないか。 さらに、社会保障番号を導入することによって、困窮世帯に対するきめ細かな減免措置や、正確で公正な保険料徴収を実現する。 改革に必要な税財源は3・2兆円だ。年金制度の国庫負担割合を2分の1に引き上げる分を合わせると、5・5兆円になる。消費税率にして2%強である。 無論、少ない金額ではないが、「全額税方式」と比較すれば、必要な税率の引き上げ幅は、ずっと小さくて済む。 ◆全額税方式は困難◆ 保険料をなくし、税金で高齢者に等しく基礎年金を支給する全額税方式は、複雑な現行制度に比べると、確かに分かりやすい。 だが、少なくとも12兆円、消費税率にして5%近い税金が新たに必要になる。年金制度のみのために、大きく消費税率を上げてしまえば、医療や介護制度の維持・充実にあてる財源の見通しが、立たなくなってしまう。 超高齢時代にまず財政的危機に直面するのは、年金よりむしろ、医療・介護だ。団塊世代が75歳以上になる2025年、年金給付の伸びが現在の1・4倍になるのに対して、医療は1・7倍、介護は2・6倍に膨らむ。 年金改革は、これを十分に視野に入れて考えねばならない。 全額税方式は、現行制度からの移行にも、大きな困難を伴う。 現行制度で保険料を払っている20〜60歳が不公平感なく移行し終えるには、40年もかかる。移行期間を短縮しようとすれば、それに応じて不公平が生じる。過程が複雑で、これまで以上の制度不信につながる懸念をぬぐえない。 ◆社会保障税で財源確保◆ 厚生労働省の推計では、07年度に約30兆円だった社会保障の公費負担は、15年度になると41兆円まで増大する見通しだ。 経済成長を持続すれば、税収が増えて社会保障費用の多くは賄える、との主張もあるが楽観的に過ぎる。景気には波があり、現実に暗雲が漂い始めた。社会保障の将来を税収の自然増に託すことは無責任だ。 消費税を「社会保障税」に替えて、目的税化することで、税率引き上げについて国民の理解を得るべきである。 食料品など生活必需品の税率は5%に据え置く。他の品目に適用する標準税率は、読売新聞が提言する年金改革案に医療・介護の改善や充実、少子化対策の費用を考え合わせると10%になる。 また、少子高齢化のさらなる進行を見据えれば、標準税率はいずれ、欧州の最低水準である15%程度を検討する必要があろう。 高齢化それ自体は憂うべきものではない。多くの人が長寿であることは本来、喜ばしいはずだ。 にもかかわらず、超高齢社会が暗いイメージで語られるのはなぜか。社会保障の財源負担の在り方が、時代状況に対応していないからである。 現行制度は、現役世代の負担に頼り過ぎている。超少子高齢時代に、社会保障を現行水準で維持しようとすれば、支える側は耐えきれまい。 全世代が広く薄く、福祉財源を負担し合う仕組みを確立する必要があろう。子や孫の世代が悲鳴を上げ、その姿を見て高齢者は長生きしたことを嘆く――。そんな社会にしてはならない。』 . |
| 2008.04.06 | ☆高齢者医療 問題を詰め切れたのか 5日、信濃毎日新聞→ 『75歳以上の人を対象とした「後期高齢者医療制度」がスタートした。 いままで被扶養者として保険料の負担がなかった人も納めることになった。しかも年金から天引きされる。高齢者に冷たい、といった批判がある。民主党など野党は廃止法案を提出する状況だ。 準備不足のままスタートした印象がぬぐいきれない。問題点を洗い出し、より広い合意が得られる仕組みを引き続き探るよう、与野党に求めたい。 これまで75歳以上の医療保険の利用は、大きく2つに分かれていた。自ら保険料を納めて国民健康保険の適用を受けるか、健保組合などに加入している家族の被扶養者になるかである。後者は保険料を払わなくてよかった。 新しい制度は75歳以上の人を切り離してひとくくりにした点に特徴がある。全員が保険料を納め、運営には各都道府県に設けた医療広域連合が当たる。保険料は全国平均で月6000円程度、長野県は約4600円になる。2年ごとに見直す。これによって、窓口負担を除いた医療費のうちの1割を、75歳以上の人の保険料で賄うことになった。4割は会社の健康保険などから「支援金」として負担する。5割は公費で賄う。 高齢者の負担分を明確にすることで、医療費の抑制につなげる狙いがある。 医療制度の改革は大事なテーマだが、今度の制度には問題点が多すぎる。 第一に、健保組合などの被扶養者だった人の保険料が新たな出費となることだ。2年間の緩和措置はあるものの、家計への負担は重くなる。保険料は将来、上がる可能性がある。病気を抱えやすい高齢者の支払いが増えていくようでは、老後の安心は得にくい。 第二に、保険料の年金からの天引きである。国のずさんな運営で年金制度が揺らいでいるというのに、取るものは取るという姿勢では反発を買って当たり前だ。75歳以上の患者を対象にした診療報酬のあり方にも疑問の声が出ている。発足直後から批判や戸惑いの声が高まっているのは、検討や周知の期間が短すぎたためだろう。 新制度の方向が決まったのは、「ねじれ国会」が生まれる前である。国民の合意が不十分だったとも言える。高齢者医療も、あらためて検討が迫られる局面だ。』 . |
| 2008.04.02 | ☆後期高齢者医療 制度は完結していない 2日、秋田魁新報→ 『一般的に65歳以上を高齢者ととらえ、74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と区分している。その後期高齢者全員と、一定の障害のある前期高齢者が加入する医療制度が1日、国民健康保険などの医療保険制度から切り離してスタートした。対象者は全国で約1300万人、県内では約17万6000人とされている。 後期高齢者医療制度は都道府県単位の広域連合が運営する。子どもらに扶養されてきた人たちを含めて加入者全員が保険料を負担し、保険料は都道府県単位で決まる。年額18万円以上の年金を受給している人は保険料が年金から天引きされる。所得に応じた軽減措置はあるものの、不安や戸惑いが広がらないよう、自治体や広域連合は周知徹底に努めてもらいたい。 保険料は各地域で掛かった医療費を基に設定され、全国平均で年額約7万円、本県平均は約6万円となる。これまで扶養家族として保険料を払っていなかった人たちにとっては、大きな負担増となる。全国には約200万人の被扶養者がおり、半年は徴収を免除した後、段階的に負担を増やす措置が取られる。 新制度は加入者が納める保険料1割、75歳未満の医療保険からの支援金4割、公費5割で賄われる。医療機関での窓口負担は通常で1割。新制度導入の主な目的は増え続ける高齢者医療費の抑制にあるが、低所得者への配慮が必要だ。滞納が1年以上続けば保険証が取り上げられ、医療費がいったん全額自己負担となる。高齢者の目に、こうした措置はかなり威圧的に映ることだろう。 受けられる医療の内容も気になる。全体の医療費を抑制する一方で医療の質が変化することはないだろうか。例えば慢性疾患の人が外来診療を受ける場合、いくら処置や検査をしても医療機関への支払いは定額になる仕組みとなった。このためコスト割れを恐れて診療を手控える医療機関が出たり「粗診粗療」につながったりはしないか、との懸念もぬぐえない。 混乱しそうな点はほかにもある。開業医が中心になって総合的に診療する「担当医」が導入された。高齢者は慢性疾患を抱えている場合が多く、計画的に診療するのが狙いだが、支払いを定額にするか従来通り出来高にするかは、担当医が判断できるシステムなのでもある。このため、新制度がうまく機能するかどうかは担当医の判断と力量にかかってくる。担当医の設定が、ほかの医療機関を受診しにくくするのも好ましくない。 問題もある新制度に対し、全国で批判が相次ぎ、県内でも見直しを求める意見書を採択した自治体議会がある。高齢者が医療費増大への責任を感じたり、負担増を嫌ったりして受診をためらうようなことにでもなれば、新制度導入の意味はなくなる。絶えず内容を点検し、改善に努める姿勢が必要だ。』 . |
| 2008.03.17 | ☆後期高齢者医療制度 長生きを喜べない社会では 17日、愛媛新聞→ 『後期高齢者医療制度が四月にスタートする。従来の老人保健制度から七十五歳以上のすべてのお年寄りなどが切り離され、新たな制度へ移行する。 だが多くの問題をはらんだままで、制度への理解も深まったとはいえない。スムーズに移行できるのか心配だ。 保険料は都道府県ごとに決まる。受け取っている年金の額や単身か、夫婦とも被保険者の世帯かなどでも変わる。本県は一人平均で月六千百九十九円。厚生労働省試算の全国平均とほぼ同額とはいえ、介護保険料と合わせると一万円前後にのぼり、生活への影響は大きい。 問題は、扶養家族となって保険料を免除されてきた人らも払わないといけないことだ。また本紙の試算では、現行の保険料からの増減は市町などで異なるようだが、現役世代の人口減少によりこの先、上がり続ける方向なのはまちがいない。 保険料が増える低所得者を対象に、独自の負担軽減策を予定している松山市の事例もある。とはいえ少数派だろう。 年間十八万円以上の年金受給者は保険料が天引きされる。一年以上滞納すれば保険証を取り上げられ、資格証明書にもとづいて 医療費をいったん全額自己負担しないといけない。受診をためらい、症状を悪化させる人が出る事態も十分予想される。 加えて見すごせないのが、最良の医療を受けられなくならないかという不安だ。 たとえば糖尿病や高血圧の慢性疾患は主治医一人が診る。報酬は特別な検査など以外どんなに処置しても一定だから、症状が重い患者のニーズにこたえようとすればするほど採算が合わなくなる。医療の質の低下が懸念されるのは当然だろう。七十五歳になった途端、こんなことが起きかねないのだ。 今後、保険証の郵送や保険料の徴収が始まり、制度の認識が深まるに従って、混乱が広がるおそれもあろう。 新制度は小泉純一郎政権のとき、医療制度改革関連法の柱として与党が強行採決で成立させた。高齢者の自己負担引き上げや療養病床の削減と同様に、主眼は医療費抑制にある。 それが昨年の参院選で自民党が大敗すると、総裁選で福田康夫首相が凍結を公約。政府、与党は被扶養者らについて四月から半年間は保険料を免除、その後段階的に上げて三年目から本来額を払うよう改めた。 衆院選を意識したその場しのぎなのは明らかだが、始まる前から一部先送りするような制度で信頼されるか疑問だ。 中止や見直しの意見書を採択した地方議会は五百を超える。野党は廃止法案を提出した。 世代間の負担の公平性はもっと議論していい。ただ社会保障費削減の大枠を変えずに配分をいじるだけでは、最も医療に頼るお年寄りの切り捨てに終わるおそれが強く、限界がある。長生きを喜べない社会になっていいはずはない。 まず新制度の運用に細心の注意を払い、必要に応じて柔軟に見直すよう求めておきたい。』 . |
| 2008.03.16 | ☆救急医療態勢 医師確保に全力挙げて 16日、信濃毎日新聞→ 『大都市を中心に、救急患者の受け入れ先を見つけるのに時間がかかる実態が明らかになった。消防庁が初めて行った全国調査で、医療機関から3回以上受け入れを断られた例は約2万5000件に上った。 長野県内は45件だった。数は少ないものの、安心してはいられない。救急受け入れを取りやめる病院が出ている。医師不足の影響は今後さらに顕在化しそうだ。 事態をこれ以上深刻にしないよう、医療機関、行政が救急態勢を維持する対策を急ぎたい。利用者側も軽い症状で夜中に行く"コンビニ受診"を避け、医師の負担を重くしなよう考えるべきだ。 3回以上受け入れを断られた約2万5000件のうち、15歳未満の子どもは8618件、妊婦が1084件。そのほかは子どもと妊婦を含む重症患者である。子どもで10回以上「受け入れ不能」となった例は220件に上る。 受け入れられない事例、照会の回数ともに東京、大阪など大都市圏に目立つ。医療機関が多いために、問い合わせ回数が多くなりがちなのが一因だ。断ってもほかで受け入れる、との思い込みもある。単純に数で比較するのでなく、何が原因か詳しい分析が必要である。 長野県では高度な治療を行える病院が限られており、大半が1回目で受け入れ先が決まっている。待機時間は30分未満が多い。搬送はうまくいっているようにも見える。 ただし、各地の中核病院で医師が足りない状態が広がり、麻酔医の不在で緊急手術ができないといった事態も起きている。地元の病院で引き受けられず、他地域の病院に遠距離搬送する例もある。 1カ所で救急受け入れをやめれば、残った病院の負担が増える悪循環である。対策の基本は救急病院に医師を増やすことだ。 国は最近になって、全国的な医師不足を認めた。医師を引き抜き合う状況を改善するには、抜本的な確保策を急がねばならない。 同時に、利用する側の意識改革が必要だ。タクシー代わりに救急車を呼んだり、時間外の方が空いているからと病院に行くのは、現場を疲弊させる。理不尽なクレームの多さも、勤務医が辞めていく一因であることを患者は自覚したい。 子どもの場合は急に症状が変わりやすい。夜間の受診を迷う人のために、電話で相談できる態勢を十分に整える必要がある。 病気やけがの程度から搬送の優先度を救急隊が判断する「トリアージ」も検討したい。自分で病院に行ける患者は、救急車に乗せないくらいの思い切った対応を考えていい。』 . |
| 2008.03.04 | ☆介護タクシー 「指揮官」の責任も重い 4日、北海道新聞→ 『市民感覚とのずれが、ますます広がった。 介護タクシー代を悪用、二億円もの生活保護費を詐取していた事件で、札幌地検が滝川市内の夫婦ら四人を詐欺罪で起訴した。 当初の逮捕容疑はわずか百五十万円の架空請求で、処分保留となった。 内容が分かるにつれ、市民だけでなく道民も非常識さにあきれている。 被害額がけた外れであること、巨額な公金をやすやすと長期間にわたってだまし取られたこと、暴力団に上納されていた疑いがあること…。 すべての疑問の根っこにあるのは、途中で何度か是正する機会があったのに、なぜ滝川市の支給が続いていたのか、ということだろう。 だから、疑問はやはり滝川市の行政責任に戻らざるを得ない。 田村弘市長は起訴後の記者会見で「生活保護という善意のシステムが悪用された」と強い憤りを表明した。 滝川市の保護費は年間十二億円だ。夫婦らはほぼ一年で二億円を詐取した疑いがある。市民こそ怒りたい。 生活保護は自治体の大切な仕事だ。その仕事には弱者を守ると同時に、不正を見抜き、悪用を防ぐことも入る。市長の言葉はそれを果たし切れなかった説明になっていない。 市長は「常識を超えた支給」について「どうして支給を決定し、実施されたのか、第三者委員会が精力的に検証している」とも述べた。 第三者委は市役所内部の検証委員会に続き、学識経験者ら外部の人で作った原因検証のための組織だ。 そこに任せているとしか聞こえず、人ごとのようだ。まさか自分が被害者だとは思っていまい。 例えば市議が一昨年、夫婦の受給の不自然さを指摘し、市監査委員は昨年二月に多額支給の調査を始めて五月に副市長に報告した。 市長と市幹部が、それを生かせなかったのはどうしてなのか。まず、自ら市民に説明してもらいたい。 実態解明を求める初の市民集会が開かれた。不正受給の国負担分に関する返還要求があった場合でも「市民の税金を使うな」と厳しい言葉が出た。 市民の疑問と不安にどう答えるか。市長が明言した「行政運営の指揮官」としての責任が問われている。 四日から定例市議会だ。市民の疑念に答える責任を市議会も負っている。 生活保護を狙う暴力団関係者の行政対象暴力は全国にある。道内でも道警、道、道内各市が対策会議などを開き、連携の強化を確認してきた。 しかし、まだ足りなかった。市の対応、警察との連携、さまざまな面で生活保護行政の弱点を突かれた。 滝川市の例でも、もっと早く警察と連携できていればとの悔いが残る。何が要因か、この点も知りたい。』 . |
| 2008.02.16 | ☆診療報酬改定 「医療崩壊」の処方箋には程遠い 16日、愛媛新聞→ 『中央社会保険医療協議会(中医協)が二〇〇八年度の診療報酬改定案を了承し、舛添要一厚生労働相に答申した。 医師の技術料などの本体部分は八年ぶりにプラス改定されることがすでに昨年末、決まっている。今回はその枠内での配分作業で、焦点は病院勤務医対策として開業医の再診料との格差をどう是正するかだった。 その点、勤務医対策に約千五百億円を投入する一方で格差是正は小幅にとどまった。課題を先送りした形だ。 中医協は付帯意見で、開業医の再診料を次回改定で抜本的に見直す方向を打ち出している。答申の不十分さを自ら認めたようなものだ。これでは「医療崩壊」の処方箋(せん)には程遠い。 国民皆保険制度のもとで日本の医療体制は世界的にも優良とされてきた。それが近年、急速に荒廃が進んでいる。 危機的現場の一つに病院の勤務医が挙げられる。献身的な長時間労働などで疲弊しきって現場を去る人材が後を絶たない。それが残った勤務医の負担をさらに過重にする悪循環で、医師不足に拍車をかけている。 深刻さは本県も同じだ。県が医師を採用して市町立病院へ派遣する「ドクタープール制度」に応募がなく、医師確保の難しさを浮かび上がらせた。喜多医師会立内山病院(内子町)のように病院そのものが休止に追い込まれる事例もある。 答申では、なるほど勤務医の負担が顕著な産科や小児科、救急部門を手厚くする狙いは伝わる。その点では評価できる。 たとえば、緊急搬送の妊産婦の入院、高度な小児医療を行う専門病院の入院、勤務医の事務を補助する医療秘書の配置などに対し、診療報酬加算の新設や拡大をする。診療所の夜間・早朝開業促進は、患者の振り分けに有効にちがいない。 一方で開業医(診療所)七百十円、勤務医(中小病院)五百七十円と格差のある再診料は、勤務医側を三十円引き上げて六百円とするにとどまった。厚労省のめざした開業医の引き下げは、衆院選をにらむ自民党と会長選を控える日本医師会の反発で断念に追い込まれた。 開業医も痛みを分かち合っていないわけではない。勤務医対策の財源の一部にするため外来管理加算を減らした。 とはいえ小泉純一郎内閣以降の医療費抑制方針のもとでは対策も小手先にならざるをえず、効果にはおのずと限界がある。 日本の国内総生産(GDP)比の医療費は先進国中で最低水準だ。医師不足も偏在だけの問題ではなく、人口当たりで先進国の約三分の二にとどまるという絶対数不足の現実がある。 各方面でひずみが噴出する状況でなお医療費抑制路線を堅持するのかどうか。根本から議論していい。 むろんそれには無駄の徹底排除が条件になる。同時に、限られた財源を有効活用するため勤務医と開業医の格差などにどう対処するか、日本医師会は身内の利害を超えて国民に納得される方策を打ち出すべきだ。』 . |
| 2008.02.16 | ☆診療報酬改定 中途半端に終わった勤務医対策 15日、讀賣新聞→ 『これで勤務医不足に歯止めをかけられるだろうか。 中央社会保険医療協議会(中医協)が、2年に1度改定される診療報酬の配分を決めた。 政府は昨年末、診療報酬の総枠については、医師の技術料など「本体部分」を0・38%引き上げることを決めている。引き上げ幅は小さいが、苦しい財政下での8年ぶりの総枠拡大だ。 過酷な状況にある救急医療や産科、小児科、外科といった分野の病院勤務医に報酬面で手厚く配慮すべきだ、との声に応えた措置である。 中医協は、手術料や産科救急の報酬を引き上げるなどして、約1500億円を病院勤務医向けに重点配分した。限られた財源の中で、最低限のメリハリをつけたとは言えよう。 だが、本気で勤務医対策に手を打つのならば、開業医の既得権に大胆に切り込むことで、もっと多くの財源を確保できたはずだ。今回の改定は、中途半端に終わったと見られても仕方あるまい。 最大の焦点は、開業医の「再診料」の見直しだった。現在、病院と開業医の初診料は2700円で同額だが、2度目以降の診察料は病院570円に対して開業医は710円と、140円も高い。 この差は、開業医が地域医療を包括的に担っていることへの評価分というが、納得する人は少ないだろう。むしろ再診料の低い病院へ患者を向かわせ、多忙な病院勤務医をさらに疲弊させる。 厚生労働省は当初、開業医の再診料を引き下げ、その分を勤務医対策の重点配分にあてる方針だった。しかし、日本医師会が強硬に反対し、見送られた。 結局、再診料は病院分を30円引き上げることでわずかに差を縮めたものの、依然として110円の開きを残した。 開業医を一律に優遇する報酬体系は、抜本的に見直すべきだ。 例えば、ビルの一室に構えた診療所に昼間だけ通勤する開業医の報酬は、大幅に削る。地域の中核病院と連携し、休日・夜間や救急医療を支えようと粉骨砕身している開業医には、もっと思い切った報酬で報いる――。こうした改革で、勤務医の負担軽減を図る必要がある。 超高齢時代に必要な医療費は、野放図な膨張を抑制しながらも、きちんと財源を確保していかねばならない。報酬の総枠が拡大されたのは、そうした認識を国民が共有しつつあるからだ。 しかし、再診料の引き下げを見送ったことは、この流れに逆行しよう。 開業医全体の既得権に固執し続ける日本医師会の体質が、改めて浮き彫りになったのではないか。』 . |
| 200802.14 | ☆診療報酬改定 勤務医不足どう歯止め 14日、中國新聞→ 『勤務医不足にどれだけの歯止めがかかるだろうか。 中央社会保険医療協議会(中医協)がきのう、公的医療保険から医療機関に支払われる二〇〇八年度の診療報酬の改定案をまとめた。産科や小児科などの医師不足で深刻さを増す、勤務医の負担軽減をどう図るかがポイントとなっている。 緊急の課題としてまず対応策を示した。その中身は、合併症があるなどリスクの高い出産の加算拡大▽緊急搬送された妊産婦の入院加算の新設▽地域の小児医療の中核的役割を果たす医療機関に対する報酬充実―など。さらに全国各地で相次いだ妊産婦の「たらい回し」への対策として、救急搬送を受け入れる病院への手当を厚くし、勤務医の事務作業を補助する職員配置にも加算する。 昨年末、医療機関の収入となる医師の技術料にあたる「本体部分」の0・38%引き上げが決まり、中医協が個別項目の調整をしていた。改定案ではこの引き上げ分による約千五百億円を勤務医対策に充てる。 財源は、より高収入とされる開業医(診療所)への報酬から病院向けに振り分ける、としている。ただ病院の収入増は平均1%程度。収入増分を病院経営者がすべて人件費に回すとは考えにくい。どれだけ勤務医の負担を軽くすることができるかは不透明だ。 診療報酬は、小泉改革以来五年間、マイナス改定が続いてきた。医療費抑制策を推し進めた結果、島しょ部や山間地など地方から産科や小児科の診療をとりやめる病院が相次ぎ、地域医療は崩壊寸前ともいわれている。 昨年末、島根県が実施した勤務医調査では、現行の診療体制で各施設が必要とする千百四十四人の医師数に対し、二百二十七人が不足している、との結果が出た。 診療報酬のマイナス改定や医師不足に伴う患者数の減少が悪循環を生み、病院の経営については60・4%が「悪くなっている」と回答。月に七回以上の当直の実態もあり、過酷な勤務実態が浮き彫りにされた。改定をどう生かすかは、何よりまず医師を確保して待遇改善を図るなど、行政とのきめ細かな連携も必要だろう。 患者は医療機関の窓口や薬局で原則三割を負担する。診療報酬が勤務医にどう支払われるかは病院経営者の裁量である。今回の改定が勤務医の待遇改善にどうつながったか、見極める目も持ちたい。』 . |
| 2008.02.12 | ☆医師の辞任 悪循環断つ知恵を絞れ 11日、北海道新聞→ 『オホーツク圏の二つの拠点病院で医師が三月末で相次いで辞めることになり、一部の診療科が休診する。 転院を余儀なくされる患者への影響が最も心配だ。 事態がここまで深刻になる前に何か打つ手はなかったのだろうか。 北見赤十字病院では「内科」の医師六人が全員辞める。このままだと、内科は四月から休診の見通しだ。 網走管内で唯一専門治療を手がける膠原(こうげん)病とリウマチの入院患者が旭川や帯広に転院する事態も十分あり得る。 道立紋別病院では、内科系の常勤医五人のうち、循環器内科と消化器内科の各二人が辞める。残る消化器内科の一人も秋で辞める意向だ。 四月から、消化器内科の医師を一人確保できることになったが、循環器内科は休診の可能性が強い。 人工透析で通院する三十人余の患者の多くは四、五十キロ離れたほかのまちの病院に通うことになりそうだ。 医師がなぜ辞めるのか。大学からの派遣年限に達した、開業する、臨床研修を受ける、と表向きはさまざまだ。 辞める時期が予想できたケースもある。病院側が早く対処すれば影響を最小限に抑えられたのではないか。 医師撤退の背景には、勤務医の過酷な労働実態がある。医師が不足するなかで、二十四時間の救急医療まで担う拠点病院の場合は深刻だ。 ただ、厳しい事情を考慮したとしても、治療中の患者を半ば放り出すような格好で立ち去るのはどうか。北見で一度に六人も辞めるのは異常だ。 後任確保の見極めがつくまでの間、とどまることはできないのか。 地元や道は医師育成の大学に協力を求めているが、まとまった人数の医師を短期間で確保するのは難しい。 地方の医師不足は、若い医師に二年間の臨床研修が義務づけられて大学でも医師が足りないことも原因だ。最後は国の責任で医師を派遣すべきだ。 休診する場合、病院は入院患者の転院先を確保し、外来患者については個々の病状や事情に応じて適切な医療機関をあっせんしなければならない。 二十四時間の救急体制を確保する努力も要る。救急の仕事はきつい。残る医師の負担増がさらなる医師の流出を生む悪循環は断ち切りたい。 地域の開業医の協力を得て、住民が安心できる体制を維持してほしい。 市町村立病院や赤十字など公的病院の医師不足は全道的な問題だ。 地方勤務を条件にした医学部の学生や研修医対象の奨学金制度が本格化する。ただ、医師として独り立ちするには十年かかり、即効性はない。 道がまとめた自治体病院の再編・集約構想を住民の理解を得ながら実行する時が来ている。 医師がこれ以上流出すれば、再編・集約自体に支障が出かねない。』 . |
| 2008.02.05 | ☆社会保障会議 首相は何をしたいのか 5日、中日新聞→ 『福田康夫首相の肝いりで始まった「社会保障国民会議」は、何を目指しているのか。福田政権が社会保障にも力を入れているということを示すだけのポーズならば、願い下げである。 「会議」開催の理由について政府は「社会保障のあるべき姿」「政府の役割」「負担の分かち合い」を「国民が具体的に思い描くことができるような議論を行うため」と説明している。 秋に最終報告を出すが、肝心なのは「会議」で具体的に何を議論し、どのような方向を目指してほしいのかを明らかにすることだ。 社会保障で当面最も大きな課題は、二〇〇四年の年金制度改正で決まった基礎年金(国民年金)の国庫負担の割合を〇九年度までに三分の一から二分の一に引き上げる際、必要な財源二・五兆円をどのように捻出(ねんしゅつ)するかである。 これまで年金収入の控除最低額の引き上げ、定率減税の縮小・廃止などで浮いた財源を充ててきたが、すでに限界に達している。 〇七年度末までに37%弱しか確保できる見通しがたっていない。 不足分の財源として消費税率の引き上げが政府・与党で浮上しているが、首相は「ただちに議論することはないと思う」とあいまいにしている。衆院選を想定し、負担増議論を避けたい意向が働いているようだ。 となると、「会議」で財源問題がどれだけ深められるのか疑問だ。 政府が音頭をとった社会保障に関する似たような会議・懇談会はこれまでに何度も開かれた。 〇六年五月には官房長官主宰の「社会保障の在り方に関する懇談会」が「財源を含めて給付と負担を全体として議論し、税・財政なども視野に入れ一体的に検討を行うべきだ」との報告書をまとめている。 この方向をさらに発展させるか別の選択肢を示さないと「会議」を開く意味が失われ、福田政権のアリバイに終わる懸念がぬぐえない。 基礎年金について現行の社会保険方式を維持するのか、将来的には全額税方式に切り替えるのかも社会保障をめぐる大きな争点だ。「会議」でも議論されるが、税方式を主張する民主党が参加を拒否したため実りある議論はほとんど期待できそうもない。 これまでの議論を通じ、社会保障に関する争点は既に出尽くした感がある。それを受けてどのような将来像を描くかを国会で議論し、決断する時期がきている。 そのためにも、衆院選で民意を問い直したあと、与野党で政策協議の場を設けるのが筋だろう。』 . |
| 2008.02.03 | ☆社会保障国民会議/政治との距離を保てるか 3日、河北新報→ 『政府が設置した社会保障国民会議(座長・吉川洋東大大学院教授)の初会合が開かれ、年金、医療、介護など社会保障制度全体の見直しに向けた議論がスタートした。 有識者による会議で幅広く検討していくこと自体は悪いことではない。だが、設置に至る経緯や今後の日程などを考えると、議論の行方は不透明と言わざるを得ない。 国民会議の設置は福田康夫首相の強い意向による。会議も首相が開催する。民主党など野党が拒否したため実現しなかったが、当初は与野党も交えた会議を目指していた。 社会保障制度をめぐる議論の焦点が財源問題にあることは言うまでもない。首相の狙いは、増加が避けられない社会保障費の財源として、消費税率引き上げに向けた環境整備を図ることだろう。 当面の大きな課題としても、基礎年金の国庫負担割合を2009年度に、従来の3分の1から2分の1に引き上げるための財源確保に迫られている。 消費税問題は次期衆院選にもかかわる重大なテーマだ。社会保障の財源問題を議論することは、政治と密接に絡まざるを得ない。 年金制度改革で、現行の保険料方式に代わる基礎年金部分の全額税方式の検討をすることも、民主党が税方式導入を主張しているとあって、やはり政治とかかわってくる。 そうであればこそ国民会議には、政治との距離を保ち、あくまでも国民の立場に立って、給付・サービスの水準と負担の在り方を検討するよう求めたい。ただ政府の意向に沿って議論を進めていくような姿勢では「国民」会議の名に値しまい。 国民会議は今後、専門家らを加えた分科会でテーマ別に議論を深め、6月に中間報告、秋に最終報告をまとめる予定だ。 だが、財源問題をはじめ意見が大きく割れることが予想されるさまざまな課題について、この短期間で意見の集約ができるのだろうか。 社会保障の在り方を検討する会議としては、04年7月にも官房長官の私的懇談会が設置されたことがある。 そのときは最終報告書の取りまとめまで2年近くかけ、しかも年金制度改革については意見をまとめきれなかった。 今回、秋に最終報告をまとめるという日程の設定は、7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)後の政局や09年度税制改正をにらんだものだろう。議論が生煮えのまま、形だけの最終報告をまとめる懸念がぬぐえない。 民主党の小沢一郎代表は国民会議設置を批判して「国会で議論すればいい。国会で一定の合意がなければ作っても意味がない」と述べている。 「ねじれ国会」の下、政府、与党と野党が鋭く対立している状況においては、その通りかもしれない。 しかしそれなら民主党も、社会保障の財源問題についてもっと国民に説明し、国会での論戦を深めていくべきだろう。』 . |
| 2008.02.02 | ☆介護タクシー 責任を曖昧にするのか 2日、北海道新聞→ 『まるで人ごと、という印象をやはりぬぐえない。 二億四千万円もの介護タクシー料金の不正受給問題で滝川市の内部検証委員会が中間報告を出した。 支給を「市民感覚を超えた」として対応のまずさを認めてはいる。 だが「なぜ」の疑問を消せない。 報告は《1》支給の根拠となる主治医の診断があった《2》道の事務監査でも「問題ない」だった《3》だから支給はやむを得なかった《4》従って違法性は問えない-と順に組み立てている。 これまでわかっていた経緯を当事者に聞きながら詳しく書き並べたにすぎない。これで誰にも、どこにも決定的な問題はなかったと結論づけるのなら早すぎる。 随所に顔をのぞかせているのは、いわば形だけの「行政の論理」だ。 報告では、関連する生活保護制度などの法やルールに反していない、仮に支給を止めて裁判になれば負ける恐れもあった、とも繰り返している。 だから担当の福祉事務所は「受け身」となり、診断書や監査の通り「追認」した。誤りを指導すべき市長や幹部は報告を受けるにとどまった-。 これは「結果はやむを得ない」と導くだけの理屈立てだ。 実際、報告書は福祉事務所が問題改善への「主導的な役割」を欠いたとしつつ、仕事を委任した市長らが福祉事務所の決定を取り消すことはできないとしている。 当事者意識を欠いたとしかみえない姿勢こそがまさに問われたはずだ。規則に従い、書類も整っていた。だからといって非常識な事態が許されるのか。目の前で起きている問題に対応できないでいいのか。こうした、いくつもの「なぜ」が宙に浮いたままでは、市民のごく普通の感覚と溝が深まるばかりだ。 また同じことが起きても不思議ではない。市民に等しくあるべき福祉行政が歪(ゆが)んだままにもなりかねない。 市の第三者委員会が発足した。学識経験者、弁護士らが中間報告をもとに議論し、最終報告を三月に出す。 ぜひ、突っ込んだ検証と分析を重ね、対応のまずさという次元にとどまらない成果としてまとめてほしい。 もちろん市の内部だけでは深くて広い全体像を描ききれない。 診断した北大病院は市の調査要請を拒否している。再考を促したい。監査を行う道、事件を捜査する警察など他の関係者の協力も当然だろう。 福祉を食い物にする不届き者が確かにいる。しかし、生活保護制度は憲法が保障する大切な仕組みだ。道内では十三万人もの人々が生活保護を受けてぎりぎりの生活を送っている。 不正が続く背景に、制度を支える行政や関係者の緩みがあってはならない。責任が曖昧(あいまい)なままでは禍根を残す。』 . |
| 2008.01.12 | ☆新たな秩序へ 消費税を社会保障目的税に 少子高齢社会の財源 11日、讀賣新聞→ 『元号が平成と改まってから20年目である。 昨年公表の人口統計によると、昭和生まれが1億人を割る一方で、平成生まれは2000万人を超えた・・・』 . |
| 2007.12.27 | ☆診療報酬改定 これでは医師不足解消できぬ 27日、宮崎日日新聞→ 『これが深刻な医師不足解消につながるとでも考えているのだろうか。 健康保険から医療機関に支払われる来年4月からの診療報酬改定で、政府は医師の技術料に当たる「本体部分」を8年ぶりに引き上げた。だが、それはわずかだ。医師不足による地域医療の崩壊が進む中で、極めて不十分な手当てと言うしかない。 引き上げは、医師不足解消を掲げた福田政権の登場で風向きが変わったことや、与党も選挙を意識して引き上げを求めたことが大きかった。だが、こんな小手先の対応で本県など地方の医療崩壊の危機が緩和するとはとても思えない。 ■産科など閉鎖相次ぐ■ 診療報酬は本体部分と薬や医療材料などの「薬科部分」で構成され、2年に一回改定される。2008年度改定では、本体部分を0・38%引き上げる一方、薬科部分は1・2%引き下げ、全体では差し引き0・82%の引き下げとなり、四回連続のマイナス改定になった。診療報酬は財政再建に取り組んだ小泉政権の5年間マイナス改定が続き、特に前回は3・16%と過去最大の引き下げだった。 このため各地で医師不足から産科や小児科の診療を閉鎖する病院が相次ぐなど、医療現場の荒廃が進んだ。本県などの中山間地、過疎地における地域医療は崩壊の瀬戸際にきている。にもかかわらず、今回の改定論議も「引き下げありき」で始まった。 政府は今年夏の来年度予算概算要求基準(シーリング)で、社会保障費約2200億円の抑制を決めたため、大半は診療報酬の引き下げで捻出(ねんしゅつ)するしかないとみられていたからだ。ただ、そうした中で本体部分だけでも引き上げたことは評価できる。今後の詰めできめ細かな対応を求めたい。 ■勤務医対策が最優先■ まずは病院の勤務医に手厚くすることが最優先だろう。医師不足は勤務医不足からだ。勤務医を増やして、当直明けでもそのまま日勤を続けるような過酷な勤務は解消し、きちんと交代制にしたい。 疲れ果て、低下している勤務医の意欲を取り戻すことが先決である。患者には窓口負担も増えることになるが、医師がいないことには話にならない。それが安心な医療にもつながる。そのためには、開業医への配分を一定程度減額することも必要だろう。 厚労省の調査では、開業医の年収は勤務医の1・8倍ある。経営資金もあるため一概に比較はできないが、疲弊した勤務医が開業に走る現状を放置するわけにはいかない。同じ開業医でも、24時間対応したり、夜間も診療している場合は報酬を増やしていい。そうすれば病院の勤務医の負担軽減にもつながるからだ。明細書付き領収書の義務付けなど、患者の視点や後発医薬品の促進も欠かせない。 今回の本体部分引き上げには、中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険への国庫負担を、大企業の健保組合が肩代わりしてシーリングを埋めてくれたことが実態にある。いわばサラリーマンの犠牲で実現できた面は否定できない。 高齢化が進展する中で医療費が増えるのは当然で、いつまでも資金を惜しむべきではない。社会保障の枠内ではなく、予算全体の中で考える時だ。』 . |
| 2007.12.24 | ☆診療報酬改定 帳尻合わせではだめだ 24日、北海道新聞→ 来年度の診療報酬改定で焦点だった医師の技術料など「本体部分」が0・38%引き上げられる。本体が上がるのは二○○○年度改定以来、八年ぶりだ。 医薬品や注射針といった薬価・材料部分が1・2%下がり、診療報酬全体では0・82%の引き下げとなる。 診療報酬は個々の治療や検査、薬に対して国が定める価格で、公的保険から医療機関、保険薬局に支払われる。国はほぼ二年おきに改定してきた。 ○二年度、当時の小泉純一郎政権が構造改革路線の中で本体部分をマイナス1・3%と初めて引き下げた。 今回の決定により、全体の改定率は四回連続引き下げとなる。 過去の診療報酬引き下げの影響で、病院の収入が減り、医療従事者を満足に確保できないところが多い。全国の自治体病院や地域の中核病院は深刻な医師不足に陥っている。医療の崩壊が現実になりつつあるのだ。 高齢化の進行と医療技術の進歩で、医療費は今後も確実に増え続ける。国民の生命と健康を守るための費用をこれ以上削れば、医療の質と安全が保証されなくなる恐れがある。そうなれば、公的保険への信頼、つまり国民皆保険の根幹が揺らぎかねない。 医療は社会資本と言える。不要な検査を減らし、効率化を図るといった無駄を省く努力が求められるのは当然だが、必要な医療費が財政事情で圧縮されるのでは困る。 国民が安心できる医療制度を維持するため、経費を確保するのは国の責務だ。国の歳出の中で、削るべきものがまだまだあるのではないか。 国が支出する医療費の総額を決め、個々の診療報酬をその枠内で増やしたり減らしたりして帳尻を合わせる現行の仕組みは限界に来ている。 来年度実施に向けて個々の診療報酬を決めるに当たり、労働条件が厳しい勤務医、とりわけ産科医と小児科医への配分を厚くする工夫が必要だろう。夜間・救急医療もそうだ。ただ、本体部分の引き上げ率はわずかで、勤務医の確保にどれほど効果があるのか疑問だ。 診療報酬の引き上げ分が医師に直接入るわけでもない。 勤務医を増やすには、医療事故対策の充実や職場環境の改善、医学生時代からの教育などの対策が不可欠だ。 高齢化に伴い、在宅医療の充実が課題となっている。勤務医への配分を増やす一方で、総合医・かかりつけ医として期待される開業医の報酬を機械的に減らすことはできないだろう。当面、限られた予算の中では、医療現場の実態に応じたメリハリのある配分を心がけることが現実的だ。 大切なのは、これからの日本の医療をどうするかの視点だ。その議論が不足している。』 . |
| 2007.12.19 | ☆医療関連予算 機械的削減の限界が露呈した 12月19日・読売→ 医師や看護師の不足が深刻化し、「医療崩壊」という声すらある。こうした現状を考えれば診療報酬の一定の引き上げもやむを得まい。 来年度予算案の閣僚折衝で、診療報酬のうち、治療の技術料などに充てる「本体」部分については、0・38%引き上げることが決まった。 本体部分は2002年度以来、引き下げか現状維持が続いていた。プラス改定は8年ぶりだ。医療費の国庫負担を約300億円増やすことになる。 救急医療や産科、小児科など、勤務が過酷で医師不足がより顕著な分野に配慮すべきだ、との声が、今回の引き上げにつながった。報酬の具体的な配分を決める中央社会保険医療協議会は、メリハリのある議論を展開して、配分先を大胆に見直す必要があろう。 医療をはじめとする社会保障関連の予算折衝はほぼ決着した。しかし、従来になく苦し紛れの措置が目立った。 社会保障費は、高齢化によって年に約8000億円ずつ自然に増える。この伸びを毎年2200億円ずつ圧縮する、というのが、政府の方針になっている。 厚生労働省は、診療報酬の「薬価」部分を1・2%引き下げたほか、安価な後発薬の使用促進などで計約1500億円を抑制することにした。 問題はその先だ。厚労省は、中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険への国庫補助を1000億円削り、その分を大企業の健保組合と公務員の共済組合に支援させることで、診療報酬本体の引き上げ財源を含め、帳尻を合わせた。 大企業の健保組合などが中小企業の健保組合を支援する、と言えば聞こえはよいが、国庫負担分を民間に肩代わりさせるものだ。大企業の健保が反発したのは当然だ。結局、暫定的な窮余の策ということになった。 一方で政府は、来年4月から始まる新高齢者保険で、予定していた窓口負担の引き上げなどを凍結する。このために1700億円の補正予算を組む。 新たな歳出抑制策はその場しのぎのものしか浮かばず、前年までに決定していた医療費抑制策は先送りする。これはもはや、機械的削減路線の限界がはっきりした、ということではないのか。 無論、社会保障費が野放図に膨張せぬよう、厳しく監視しなければならない。だが、超高齢社会に必要な予算はきちんと確保すべきである。 それには消費税率の引き上げが避けられないことは明白だ。その議論を先送りしたままでは、社会保障の予算編成は毎年、迷走することになろう。 . |
| 2007.12.19 | ☆少子化対策 「働かせ方」を見直そう 19日、中日新聞→ 『政府の「子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議」が、新たな少子化対策の報告書をまとめた。柱に「働き方の改革」を掲げ労使の自主的な取り組みを求めているが、それだけでは不十分だ。 同会議は歯止めがかからない少子化への対策をてこ入れしようと、仕事と子育てを両立できる社会基盤づくりの方策を検討してきた。多様な子育てニーズに応えるため、柔軟な保育サービスの充実と医療保険や児童福祉、母子保健など給付と負担の方法が違う各制度の見直しによる「利用者が求める子育てサービス基盤整備」の支援策を柱に据えた。 こうしたサービスを利用して子育てするには多様な働き方ができることが重要として「働き方の改革」も柱に掲げ、双方を少子化対策の「車の両輪」と位置づけた。 働き方の改革を実現する手だてとして政府が最重要課題と考えるのがワークライフバランス(仕事と生活の調和)の推進だ。同会議に先立ち、労使の代表も参加した「官民トップ会議」がその基本方針となる「憲章」と行動指針を決定した。 ワークライフバランスとは、誰もが仕事と、子育て・介護などの家庭生活、地域活動、勉学などを自らが望むバランスで営めることをいう。厚生労働省の試算では二〇三〇年の労働力人口は現在より約一千万人減る。その底上げには、この推進により、女性が安心して働きながら出産・育児ができ、男性も育児・家事に参加できる労働環境が必要だ。 その推進は確かに重要だが、その前に解決すべき問題がある。働く三人に一人を占める非正規雇用問題が依然、改善されない。雇用が不安定で低賃金の非正規雇用では、出産・育児どころか結婚が難しい。年金や医療保険など社会保障費の負担は増える一方だ。これでは仕事と生活の調和を実現する以前の問題だ。正規雇用者も、賃金は上がらないのに長時間労働を強いられている。 政府は非正規雇用の労働環境改善に労働者派遣法を改正し、緩めてきた雇用の規制を強化すべきだ。正規雇用の長時間労働対策に、月八十時間を超える残業代の割増率を現行25%から50%へ引き上げる労働基準法の改正も速やかに行うべきだ。 経営側の取り組みも遅れている。非正規雇用の正規化を進めてほしい。正規雇用者の長時間労働の改善も必要だ。政府は働き方の改革実現に労使の自主的努力を期待している。だが、勤労者は自分で働き方を選べない。政府、経営側の「働かせ方」こそ変えるべきだ。』 . |
| 2007.12.06 | ☆診療報酬改定 配分の見直しが重要だ 6日、中日新聞→ 『二年に一度の診療報酬改定論議が大詰めを迎えている。大切なことは、医療の質を落とさないようにする一方、無駄を排し、従来よりも報酬を病院へ厚く盛るなど配分の見直しを徹底的に行うことだ。 診療報酬の改定率は二〇〇二年度から〇六年度まで三回連続してマイナスを記録し、特に〇六年度は3・16%と大幅な引き下げだった。 それだけに〇八年度では引き上げを求める診療側の声は強い。 次期改定について厚生労働省社会保障審議会の部会が「(医療現場の)厳しい現状を認識する必要がある」と基本方針で引き上げを促したのはこのためだ。 政府が今月下旬の予算編成過程の中で改定率を示した後、中央社会保険医療協議会(中医協)が具体的な診療報酬点数の設定作業を始める。 基本方針が指摘するまでもなく、産科や小児科をはじめとする病院、特に公立病院の勤務医の過酷な勤務状況は、頻発する診療休止などを通し、一般国民にも知られてきた。 これ以上、放置していては安心して出産・育児に取り組めない。これらの診療科の負担を軽減し、病院が安心して診療を続けられる体制にする必要がある。そのためには報酬引き上げはやむを得ない。 必要な財源をどう賄うか。報酬全体の引き上げは選択肢の一つだが、財源に限りがある以上、それだけに頼ることはできない。 医療費の五分の一を占める医薬品について、先発品よりも価格の安い後発品の使用促進を図るなど、まず無駄の排除が必要だ。同時に、従来の報酬全体の配分を見直すべきだ。 従来、報酬体系は病院よりも診療所(開業医)を優遇してきた。 少しずつ是正されてきたが、まだ不十分だ。勤務医に比べ開業医の収入が依然高額であることがそれを示している。勤務医をやめて 開業する医師が増えているのはこのためだろう。診療所の初診・再診料などを引き下げ、その分を病院に回し、医師や看護師などが安心して業務に専念できるようにしたい。 地域医療に真剣に取り組んでいる診療所は少なくない。それにはきちんと報いなければならない。〇六年度改定で「在宅療養支援診療所」を優遇する報酬改定がなされたが、今後さらに在宅医療が増えることが予想される以上、その報酬引き上げも欠かせない。 救急病院などに症状の軽い患者がかかるのを減らすために、診療所の休日や夜間など時間外診療の報酬は引き上げたい。 報酬改定で強く求められることは、めりはりのある配分である。』 . |
| 2007.12.05 | ☆生活保護 安易な引き下げは疑問 5日、信濃毎日新聞→ 『厚生労働省が生活保護水準の引き下げを検討している。低所得者世帯の生活費と比べ、生活保護世帯への生活扶助が上回っているケースがあることを根拠にしている。 ちょっと待ってほしい。生活保護は、憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に基づく制度である。暮らしを守る最後のセーフティーネット(安全網)だ。 一方、働いても生活に困っているワーキングプア(働く貧困層)と呼ばれる人たちの増加は、格差拡大を反映した社会問題である。本来ならば最低賃金の底上げを図るなどして、低所得者層を減らし、健康で文化的な生活ができるようにすることを目指すべきだ。相対的な比較を持ち出して、生活保護費を引き下げるというのは筋が違う。ものさしの使い方を間違っている。 全世帯の中で収入が下から1割に当たる低所得世帯では、夫婦と子ども1人の勤労世帯、60歳以上の単身世帯のいずれにおいても、生活保護費のうち食費など生活費に当たる生活扶助が、生活保護を受けていない世帯の生活費を上回っている-。厚労省が引き下げの根拠とするのはこんな調査結果だ。 “逆転現象”は低所得者の勤労意欲を減退させかねない、との懸念も表明している。 ここで考えたいのは、生活保護水準の引き下げが逆に低所得者の足を引っ張る結果を招きかねないことだ。先ごろ成立した改正最低賃金法には生活保護との整合性を配慮することが明記されており、生活保護水準が下がることで最低賃金の底上げも勢いを失う恐れがある。 日本の最低賃金は主要先進国の中では最も低い水準だ。大企業は潤い、中小企業は低迷状態が続く。企業は正規社員を増やす代わりに賃金を、パート社員を増やすことで人件費を抑制している。雇用が不安定になれば低所得者や生活保護世帯が増えるのは当然である。 厚労省が生活保護水準の引き下げを考え出したのは、2008年度予算で社会保障費の伸びの抑制を求められているからだ。 生活保護をめぐっては不正受給の増加など、問題も多い。暴力団関係者が受給しているケースなどが報じられ、運用への疑念を生じさせている。早急な是正が求められる。 そうでないと生活保護制度に対する国民の理解も深まらない。一部で問題となった支給窓口となる行政の不誠実な対応も改善が必要だ。 基本はあくまで、暮らしを保障するセーフティーネットとしての役割を踏まえ、機能をきちんと維持していくことである。安易に手をつけてはならない。』 . |
| 2007.12.02 | ☆生活保護切り下げ 物差しの当て方が逆だ 2日、中國新聞→ 『働きながらも収入が少ない人たち(ワーキングプア)の中には、生活保護で支給される「生活扶助」の金額より低い出費で暮らしているケースがある。ならばそれに合わせて保護基準を引き下げようと厚生労働省が計画している。もっともらしくは聞こえるが、物差しの当て方が逆ではないか。 厚労省の検討会がおととい、こんな報告書をまとめた。 夫婦と子どもの三人世帯でみると、低所得世帯の生活費が月額約十四万九千円なのに比べ、生活扶助は千六百円高い。六十歳以上の一人世帯では八千四百円高い。 その差額分引き下げが厚労省の狙いのようだが、これでは生活保護の理念にもとるだろう。 国民は「健康で文化的な最低限度の生活」を憲法で保障されている。誰でも働けなかったり、収入が減ったりして生活苦に陥ることがある。その時に、目安になる「最低生活費」と収入との差額が支給される。これが生活保護だ。 とすれば先の場合、低所得世帯に対しては不足分の保護申請を促すのが筋だといえよう。 背景には財政事情がある。政府は、骨太の方針で社会保障費の圧縮を打ち出した。厚労省は来年度予算で千二百億円の抑制を求められ、その一部を保護費減で賄おうとしているからだ。 「最低生活費」が高額に設定してあるのなら、それも仕方ないかもしれない。しかし現実はぎりぎり。老齢加算が廃止された時には「風呂の回数を減らして節約」「香典が出せないから葬儀に行かない」など切実な声が上がった。それをさらに切り詰めたら、生活はどうなるだろう。 「マイナスの悪循環」も懸念される。先に成立した改正最低賃金法は、生活保護並みの収入アップを念頭に置いて、最低賃金を決めるよう求めている。ワーキングプアを救うためだ。保護基準が下がり、連動して最低賃金も下がるようでは、改正法が泣く。 邪推かもしれないが、厚労省は、一部にある生活保護への冷ややかな目に「悪のり」しているようにも感じる。昨年度は九十億円にも上った不正受給は厳しくチェックしなければならないが、それとこれとは別の話である。 歳出削減が叫ばれながら道路予算などは縛りが緩みつつある。防衛省の疑惑をみると、野放図な支出を疑わざるを得ない。国民の「命綱」に手をつける前に、まだすることがあろう。』 . |
| 2007.12.02 | ☆(宮崎)県内障害者雇用 企業はもっと本腰で取り組め 2日、宮崎日日新聞→ 『障害者が社会で自立し、生きがいをもって生活できるためには、それぞれの能力を十分に生かせる就労の場があることが大切な要素の一つだ。 宮崎労働局が発表した最近の県内障害者雇用状況では、民間企業の法定雇用率を達成している割合が全国で2番目に高いことが分かった。 県内事業者に障害者雇用に対する理念が広く理解されるようになったことは歓迎すべきことだ。 ただ一方で、4割の企業では法定雇用率が未達成であり、まだまだ努力が必要だ。関係機関と企業がさらに連携を図り、より多くの障害者の安定的な就労の場確保が求められる。 ■法定雇用率6割達成■ 障害者雇用促進法では、従業員が56人以上の民間企業の知的、身体障害者の法定雇用率は1・8%と定められている。 県内民間企業における障害者雇用状況(6月1日現在)によると、対象となる570社のうち法定雇用率を満たしたのは352社。達成率は前年比5ポイント増の61・8%で全国平均の43・8%を大幅に上回り、県内事業者の意識の高さがうかがえる。 同労働局職業対策課によると、「関係機関による地道な働きかけが徐々に浸透しつつある」という。また同課によれば、法定雇用率未達成の残り約4割の企業でも不足数が一人という企業が約8割を占めている。 これらの企業はある程度雇用に理解を示していると言え、同課では「より重点的に指導する」対象としており、雇用数増の成果を期待したい。 一方、県警や県教委と県内2市町が法定雇用率未達成だ。専門職種に対する受験者がいないなど一概に対応が遅れているとは言えないが、民間に理解が進む中、公的機関はその模範となるべきである。採用計画見直しや職種の掘り起こしなど対策はあるはずだ。 ■企業力を高める好機■ 県内の各ハローワークへ登録している障害者は9月末現在で計5883人。このうち就業中の人は3820人となっている。就業者数は年々増加し、10年前と比べると約千人増えているが、働く意欲があっても仕事に就けないでいる人がまだ多くいるのも事実だ。 障害者雇用率を高めるには、企業側の努力ももちろんだが事業者、障害者双方の不安解消など壁を取り除くための支援態勢も不可欠となる。 「トライアル雇用」という有効な制度がある。障害者と企業がいきなり雇用契約を結ばず、試用期間を設け適性や可能性を見極め、互いの理解を深めることで常用雇用につなげるものだ。障害者雇用の第一段階として多くの企業が制度を利用してほしい。 また、障害者が就職する際、専門の担当者が一緒に職場に入り支援、事業者、家族への提案、助言をする高齢・障害者支援機構の「ジョブコーチ」支援事業も積極的に活用したい。 企業が障害者を採用する場合、障害者の能力を十分発揮させ、働きやすい環境を提供するには施設の整備など講じなければならない措置もある。 事業者に対しての各種助成制度も雇用支援策の重要な柱となる。ぜひ多くの事業者へ制度の周知を図りたい。 能力をもった意欲ある障害者の雇用は事業者にとっても企業力を高めるチャンスだ。各種支援制度の活用と関係機関の連携で求人開拓を進めたい。』 . |
| 2007.11.29 | ☆診療報酬改定 医師確保につなげたい 28日、信濃毎日新聞→ 『診察や薬の値段を決める診療報酬改定の論議が本格化している。厚生労働省は医師不足の解消を狙い、勤務医の負担軽減につながる報酬体形にする方針で臨んでいる。 病院や地方自治体がいくら対策を練っても、医師不足打開の糸口がつかめない。状況を変えるには、病院への報酬配分を手厚くし、医師が働き続けられるよう、思い切った見直しが必要になる。 診療報酬は、公的医療保険から医療機関や薬局に支払う技術料や薬剤などの価格である。2年ごとに見直している。 厚労省の社会保障審議会が改定の基本方針を審議し、年末までに政府が報酬全体の増減率を決める仕組みだ。個々の診療行為への報酬額などは、中央社会保険医療協議会(中医協)が決定する。 診療報酬の改定は、医療政策のかじ取りになる。今回、特に大事なのは、勤務医確保につながる仕組みにする観点だ。 厚労省によると、民間の診療所院長、つまり一般的な開業医の月収は平均211万円で、勤務医の1・6倍余になる。開業すれば経営にエネルギーを割く必要があるとしても、これだけ差があれば開業志向が高くなるのも無理はない。不公平感を解消し、勤務医が過重な労働を背負う環境は早く改善したい。 基本方針案では、手の足りない産科、小児科に報酬を手厚くする。リスクの高い妊産婦への診療報酬を引き上げる、といった見直しになる。時間外に患者が集中する病院の負担を軽くするために、診療所が夜間に診療を行う場合は報酬を加算することも検討している。 新たに医療クラーク(事務員)制度も導入する方向だ。勤務医が多忙な理由の一つは、カルテや説明書など文書作成に手間がかかることにある。クラークが補助役になれば、医師は診療に専念できる。 価格の安い後発薬への切り替えを容易にしたり、終末期のお年寄りの診療やケアについて患者の意思を確認した文書を作れば報酬を加算する、といった案も浮上している。実施されれば、患者にプラスとなる。 最大の焦点は、今回もマイナス改定とするかどうかだ。政府の歳出削減策で、2002年度から診療報酬は引き下げが続いている。財務省の財政制度等審議会は、今回も同様の姿勢を崩していない。 たび重なる引き下げで病院経営は厳しい。無駄を見直し、経営効率を上げるのは大事だが、産科が休止したり、身近な病院がなくなっていく事態はなんとかしたい。 診療報酬の削減ありき、ではないきめ細かな配慮が必要だ。』 . |
| 2007.11.27 | ☆再生団体回避 今が自治体の正念場だ 北海道 27日、北海道新聞→ 『道内自治体の財政危機を何とか克服しなければならない。 北海道新聞の試算で、連結実質赤字比率が「35-40%」以上となる自治体が、夕張市、赤平市、胆振管内白老町、後志管内積丹町の四市町とわかった。 「第二の夕張」は出したくない。それだけに、危険水域の自治体がまだあったという衝撃は大きい。 同比率は自治体財政健全化法に基づく指標の一つで、数値は総務省が調整中だが、「35-40%」が再生団体基準となりそうだ。ただ、試算として使ったのは二○○六年度決算で、これで再生団体となるわけではない。 とはいえ、来月には数値も政令で決まる。今後、編成する来年度予算案の結果、つまり○八年度決算が出る二年後の○九年秋には判定が下る。 財政問題の解決に割ける時間の余裕はあまりない。いっそう改善の取り組みを強め、知恵をこらして再生団体を回避しなければならない。 残念ながら、道内自治体の努力はこれまでまだら模様だった。 人件費削減など厳しい予算編成を行い、夕張並みの切り詰めで累積赤字を減らす自治体がある一方で、漫然と過大投資を重ねる自治体もある。 それが住民サービスという理屈だったが、住民を言い訳にした放漫財政が許されないのは当然だ。 健全化法が定める指標は四つある。今の制度では病院、観光会計が判断の対象外で、夕張の巨額赤字を見逃した教訓から生まれた。総務省は抜け道を許さないようにするという。 これまで自治体は一般会計から金を出し赤字の他会計を助けてきた。その財源となる交付税は削減が続き、この手法はもう使えない。指標は全会計を見るので、ごまかしもきかない。 自治体は現状の点検と、立て直し策の立案を急ぐべきだ。来年度予算案に反映しないと間に合わない。 深刻なのは病院問題だ。医師不足、看護師不足、診療報酬引き下げと、自治体病院は三重苦にあえぐ。 とりわけ旧産炭地、過疎地はじわじわと進む人口減や高齢化が追い打ちをかける。収益力が低下し、悪循環に陥っている病院も多い。 だからこそ総務省は公立病院の経営改善、道は自治体病院再編を図る。しかし、自治体だけで不良債務を解消できるとは思えない。 命を守る医療だ。赤字解消、効率化はもちろん必要だが、地域医療を維持する財政措置も必要ではないか。 自治体と住民の関係も変わらねばならない。住民は「うちはどうか」と自治体に問うてはどうか。自治体は積極的に情報を公開して答える-。 任せきりにした自治体が失敗すれば、ツケは住民に回る。後悔を防ぐカギは互いの緊張感と信頼関係だろう。』 . |
| 2007.11.26 | ☆感染症対策 日本が後進国になってしまう 26日、読売新聞→ 『エボラ出血熱のような強力な感染症が発生すると、日本では確実な診断ができない。 全く未知の感染症だと、病原体の解明さえできない。 そんなお寒い現状が、どれだけ知られているだろうか。 原因は、強力な病原体を安全に扱うための特別な施設が、国内に整備されていないことにある。いつまでも放置しておくわけにはいかない。 こうした施設は、専門的には、「BSL4」(別名P4)と呼ばれる。 BSLは、病原体の安全な扱い方を定めた4段階の国際基準(Bio Safety Level)を指している。その中で、「4」は最も厳しい。 病原体を扱う区画は外部と遮断し、空気が外に漏れないよう内部を低い気圧に保つ。換気時は高温加熱して病原体を死滅させる。区画内で作業する時は、宇宙服のような防護服を着ることもある。 感染力が強く、感染すれば生命にかかわる病原体を分析し、詳しく研究するにはこうした施設が欠かせない。 日本を除く、すべての先進国で整備されている。ドイツや米国のように、国内に複数存在する国もある。アジアでも台湾がすでに稼働させている。 日本も過去に、BSL4の条件を満たす施設を小規模ながら建設した。国立感染症研究所(東京都武蔵村山市)と理化学研究所(茨城県つくば市)だ。 だが、周辺住民たちの理解が得られていない。反対運動も続いており、BSL4施設として利用できない。 強力な感染症が発生すると、海外に分析を依頼せざるを得ない事態も想定されている。最悪の場合、患者を救えず、いたずらに感染を広げるのではないか、と専門家の多くが心配している。 政府は、既存施設だけでも、利用に同意を得る努力をしなくてはならない。 バイオテロへの備えも、近年、緊急度が増している。細菌やウイルスがテロに使われた場合、速やかに病原体を分離、分析し、対策を講じねばならない。 世界各地で発生する新たな感染症の研究にいち早く着手し、国際的に貢献するにも、BSL4施設が要る。新型インフルエンザがその例だ。ワクチンや治療薬の開発にも欠かせない。 東京都内で、最近、世界各地のBSL4施設の担当者が集まるシンポジウムがあった。この分野で最先端を行く米国では、最新のBSL4施設内に、動物実験の設備や、高度な画像診断装置まで設ける例があることが紹介された。 日本とは、天地の差がある。感染症対策の後進国となってはならない。』 . |
| 2007.11.24 | ☆社会保障税 与野党が具体的な選択肢を示せ 24日、読売新聞→ 『安定した社会保障財源を確保するために、消費税をどう活用していくべきか。具体案作りを急ぐきっかけにしたい。 自民党の財政改革研究会が、財政健全化への道筋を示した中間報告をまとめた。 報告は、消費税を「社会保障税」へ改称し、「非社会保障の歳出には消費税以外の歳入を充てる」ことを提言した。目的税化を鮮明にして、税率引き上げへの国民の理解を得やすくする狙いだ。 そのうえで、団塊世代が年金受給者となる2010年代半ばには、年金・医療・介護と少子化対策の費用を賄うため、現行消費税で10%程度の財源が必要になると指摘している。 さらに、09年度の実施が決まっている基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引き上げや、11年度での達成が政府目標となっている基礎的財政収支の黒字化を実現するために、「早期に」税制上の措置を講じることも打ち出した。 基礎年金の国庫負担割合引き上げに必要な財源は、消費税の税率1%分にあたる。中間報告は、まず09年度にも現行5%の消費税率の引き上げに着手し、10年代半ばには10%程度に引き上げる――という手順を事実上、提言している。 少子高齢化の下で、社会保障制度を確実に維持していくには、国民各層が広く負担し、景気変動の影響を受けにくい消費税の税率引き上げが不可欠だ。 だが、小泉内閣では消費税論議が封印され、安倍内閣でも税制抜本改革の検討を先送りしてきた。一研究会の報告とはいえ、ようやく与党の中から、具体的な税率引き上げ時期や幅を含めた提案が示された意義は大きい。 自民党内には消費税論議に消極的な意見も残る。福田首相も最近、「今、消費税のことを言うと、国民は怒るだろう」と発言している。衆 院解散・総選挙の可能性も念頭にあろうが、消費税率引き上げから目をそらし続ければ、将来の国民生活に大きなツケが回ってくる。 実際に税率を引き上げるには、生活必需品などを対象にした軽減税率の導入や地方消費税の取り扱いなど、検討すべき点が多い。こうした点を早急に詰めて、正式な政策案をまとめあげるのが、政権を担う者の務めだ。 野党の民主党は、消費税率の引き上げに反対している。それで必要な財源が確保できるのだろうか。明確な青写真を提示してほしい。 消費税の増税には、国民的な合意が欠かせない。与野党が具体的な選択肢を示してこそ、合意形成へ向けた論議を本格的に始めることができる。』 . |
| 2007.11.24 | ☆医療保険 安易すぎる「財政調整」 24日、中日新聞→ 『中小企業の従業員らが加入する政府管掌健康保険(政管健保)への国庫補助を健保組合などに肩代わりさせるのは筋が通らない。健保組合の自主性を否定する安易な「財政調整」は見直すべきだ。 問題は、来年度予算の概算要求基準(シーリング)で社会保障関係費の自然増を二千二百億円削減する方針が打ち出されたことに端を発している。この財源を捻出(ねんしゅつ)するには来年四月の診療報酬改定の際に薬価を引き下げたり、後発医薬品の使用促進を図っただけでは足りず、政府が窮余の策として考えたのが国庫補助の肩代わりだ。 具体的には、健保組合が千九百億円、共済組合に千億円、合わせて二千九百億円支出させ、政管健保への二千二百億円の国庫補助を削減したうえ、残りの七百億円を政管健保の収支改善に充てるというものだ。 厚生労働省は、この「財政調整」について「医療保険制度の一元化に向けた重要なステップ」「政管健保と他との格差是正」と説明している。 だが、昨年、医療制度改革関連法が成立した際、国会で一元化についてはほとんど論議されていない。まがりなりにも一元化が論議されてきた年金制度とは状況が違うのだ。厚労省の説明はへ理屈にすぎない。 組合健保に比べ政管健保加入者の給与水準が低いことなどから、政管健保に国庫補助することは健保法に明記されている。一方の健保組合はもともと自助努力で成り立つ組織であり、従業員の疾病予防活動などを通じて保険料上昇を抑制してきた。 「格差是正」の名のもとに安易な「財政調整」を行うことは、健保組合の努力に水を差すものだ。 さらになぜ被用者保険の中だけで「財政調整」するのか。健康保険組合連合会の調べでは、開業の医師、歯科医師、薬剤師らがそれぞれ加入する全国百六十余の「国保組合」には年間三千億円の国庫補助が出され、一般勤労者の窓口負担が三割になった二〇〇三年度以降も一-二割負担にとどめたり、自己負担金の還元で実質三割未満の負担で済ませている組合が少なくない。国保組合への国庫補助を先に減らすべきだろう。 一方で健保組合などに肩代わりを求め、他方で来年四月から実施の「高齢者医療制度」の負担増凍結を打ち出し、千数百億円の負担を本年度の補正予算で穴埋めすることも矛盾しており、医療政策としての一貫性を欠く。 政管健保への国庫補助分の財源をどう確保するか、政府にはその場しのぎで健保組合などに負担させるのではなく、状況を国民に十分説明し合意の道を探ることが求められる。』 . |
| 2007.11.23 | ☆介護タクシー あぜんとする不正受給 23日北海道新聞→ 『通院時の交通費補助制度を悪用して滝川市から生活保護費をだましとったとして、夫婦ら四人が、詐欺の容疑で道警に逮捕された。 滝川から札幌の病院まで介護タクシーを利用したと偽った。昨年四月からの被害総額は二億円を超えるとみられる。金額が雪だるま式に膨らんでいったのに、行政のチェック機能が働いていなかったことに、あぜんとし、怒りがわく。 どうして、不正を長期間、許してきたのだろうか。 道警は全容解明を急いでほしい。滝川市も不正を見逃した経過をきちんと検証し、説明しなければならない。 生活保護受給者は、車を持てないため、通院にタクシーを利用した場合、費用全額を請求できる。 滝川-札幌間の介護タクシー費は担架つきの大型車に介護員を付けても通常は往復六万円という。逮捕された夫と妻は一往復二十五万円も申請した。介護タクシー会社の役員らと組んで不正に受給した疑いが持たれている。 第一段階の審査に問題があったのではないか。夫は札幌市から生活保護を受けていた当時、滝川に介護タクシーで通院し、札幌市から二回各二十万円の支給を受けた。その実績資料を示された滝川市が、夫の説明通り認めた。 業界の相場などを含めた詳細な調査をしなかった責任が問われよう。 チェックする第二の機会もあった。道は一月、滝川市の生活保護世帯を対象に定期監査した。支給額が多大な今回のケースの相談を市から受けたが、書類が整っていたので追認した。 道の監査は現在、生活保護世帯のごく一部を抽出して調査している。「早急に工夫したい」という。受給者全体の中で、その市町村が問題を感じているケースを重点に調べてはどうか。生活保護費の不正受給はこの五年間に全国で倍増した。昨年度は前年度より三割増の約九十億円に上った。暴力団員には受給資格がないが、不正に受け取り、資金源にしたケースもある。 近年、暴力団が地方自治体への不当な要求に資金源の範囲を広げている。 警察庁の調査では、地方自治体の三分の一が、過去に暴力団や関係者から、機関紙購読や生活保護の受給などの不当な要求を受けていた。自治体が要求に応じた理由として「トラブルの拡大を恐れて」などが目立った。 道警は、夫が暴力団関係者と交友があったとみて調べている。滝川市の担当者が圧力を感じなかっただろうか。 暴力団との関係が疑われる場合、個人ではなく、組織的な対応をすることが肝心だ。旭川市は八年前から道警OBを生活保護課に配置し、元暴力団員や暴力的発言をする人の審査にケースワーカーと一緒に対応している。 市町村は道や道警とともに、不正受給の根絶へ知恵を絞ってほしい。』 . |
| 2007.11.12 | ☆混合診療 患者が納得いく制度に 12日、北海道新聞→ 『公的医療保険が適用される保険診療と保険適用外の自由診療を併用する「混合診療」を原則禁じた国の施策は違法だ、と東京地裁が判決を下した。 国は控訴の方針だが、以前から賛否のある混合診療のあり方を根本的に見直すよう司法が国に迫ったと言える。 現行では、混合診療を受けた場合、本来なら保険が適用されて患者負担が原則三割で済む診療や投薬などの費用も丸ごと自己負担になる。 原告の男性は腎臓がんを患い、保険がきく診療と保険外の治療を受けていたが、病院から「混合診療に当たる」と言われ、併用できなくなった。 保険が適用されれば月に六、七万円で済む治療費が二十五万円に跳ね上がってしまう。男性は「保険の対象となる治療費まで全額負担させる制度はおかしい」と国を訴えた。 国は「保険診療に自由診療が加わった場合は、一体の新たな医療行為とみるべきだ」と主張したが、判決は「混合診療を禁止する法的根拠はない」と退け、男性の保険受給権を認めた。 判決が確定していないとはいえ、混合診療を禁じる土台が崩れた。国が現行の制度を維持しようとするなら、国民が納得できる説明をすべきだ。 がんや難病の患者にとって、いまの制度は十分とは言えない。 欧米で使われている薬でも、国内で未承認で保険適用外ならば、薬以外の費用を含めて全額自己負担となる。 国は安全性、有効性が確立した先進医療や薬、追加的医療サービスは混合診療であっても保険診療との併用を例外的に認めてきた。一部の抗がん剤や入院時の「差額ベッド」がそうだ。 このように、制度は国の裁量で運用されてきた。国は、情報公開に努めながら、保険診療と併用できる範囲を国民が納得のいく形で拡大し、患者本位の制度に近づけていくべきだ。 今回の判決を受け、規制緩和を求める経済界から「混合診療を解禁せよ」との声が再び高まる可能性がある。 しかし、混合診療はさまざまな問題をはらんでいる。患者の負担増となる自由診療が増え、経済力によって受けられる医療に格差が生まれる。 怪しげな診療が保険の枠外で横行するおそれもある。不心得な医師が保険外の高価な薬を勧めるかもしれない。 経済界は、医療に関する国民の選択と負担の幅を広げれば医療の質の向上や新たな需要が期待できるとする。 これでは、「必要かつ適切な医療は保険診療で確保する」との国民皆保険の根幹が揺らいでしまう。安全、公平性の面でも問題だ。民間保険の普及を図ろうとの意図も見え隠れする。 混合診療を一気に拡大するには課題が多すぎる。医療費の削減だけを考えるのではなく、国はまず患者の実態に目を向けるべきだ。』 . |
| 2007.11.10 | ☆混合診療 患者の声聞き、論議を 10日、信濃毎日新聞→ 『公的医療保険で認められていない治療を受けると、保険適用の治療も全額自己負担になるのはおかしい-。たった一人で闘ったがん患者の訴えに、東京地裁は国の政策の違法性を認めた。 国は保険診療と保険適用外の自由診療を一緒に行う「混合診療」を原則禁止している。地裁はこれを「法的根拠がない」と判断した。 今回の判決は、医療保険制度の在り方に一石を投じるものだ。混合診療解禁には慎重に臨むべきだとしても、患者の切実な思いに応える方法も探りたい。 原告は神奈川県に住む男性である。2000年に腎臓がんと診断され、その後頭などに転移した。保険で認められている治療に加え、適用外の免疫を高める治療も受けることになった。すると、医療費は3割負担の月約7万円だったのが、すべて自己負担となる。毎月約75万円に上ることが分かった。 厚生労働省が混合診療を原則認めないのは、保険が効かない自由診療が広がると、経済力によって受けられる医療に格差が生じることを懸念するためだ。未承認の薬は国として安全性や有効性が確かめられないことも理由に挙げる。 少しでも効く薬があれば使いたいのが患者や家族の願いだ。がんの再発患者は治療の選択肢が狭まるだけに切実だ。未承認の薬の使用を求める声は根強い。 2004年に、国は一部のがん治療に混合診療を広げることを決めた。小泉内閣時代の規制改革・民間開放推進会議などが解禁を求めたのに対し、厚労省や日本医師会が反対。妥協の末の一部解禁だった。 今回の判決は、命にかかわる問題で、患者の切実な声に応えた。門戸拡大の要望はより高まりそうだ。認められれば、患者の負担軽減にはなるだろう。 半面、課題も多い。自由診療が広がれば、平等に医療を受けられる国民皆保険の基本が揺らぐ。命をカネで買うようになっては困る。 がんの治療はいまでも地域や医療機関によって格差がある。混合診療が解禁となり、いっそう差が開くようでは問題だ。 安全性の確認も心配だ。安易な投薬が広がれば、新たな健康被害を生みかねない。 混合診療が認められても、負担の大きい自由診療を受けられる患者は限られている。新薬の承認作業を迅速にし、必要な医療は保険に組み入れることを最優先にしたい。 法的な不備が指摘されたからには制度を再検討する必要はあるだろう。患者の声を最大限聞きながら、慎重な議論を重ねたい。』 . |
| 2007.11.09 | ☆労働2法案衆院通過 格差是正への一歩だが 9日、中國新聞→ 『衆参両院の「ねじれ現象」となっている今国会で、政府提出法案をめぐって与党と民主党が修正で合意した初のケースである。労働関係三法案のうち、最低賃金法改正案と労働契約法案がきのう、衆院を通過した。この二法案が成立しても格差是正にはほど遠い状況だが、第一歩と位置付けたい。 厚生労働省の調査によると、地域最賃で働いた場合の月収(一日八時間、二十二日就労)と、十八―十九歳の独身者の生活保護(生活費と住宅費)を比較すると、東京、大阪、広島などの都市部で生活保護の額が上回る。 これはフリーターなどで働く人の時給が、最低限の生活すらままならない額であることを示している。最賃の底上げを図る最賃法改正案は、この「逆転現象」の解消などが目的だ。ワーキングプア(働く貧困層)が増えているだけに、働く人の賃金が生活保護費を上回るのは当然であろう。 改正案では「生活保護との整合性も考慮する」が盛り込まれた。地域最賃の上げ幅を決める際、大きな判断材料になりそうだ。 修正協議では、民主党が「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう」という文言を政府案に追加するよう求め、与党は応じた。最賃の引き上げは与野党とも主張している。地域別最賃の引き上げを促す、という目的を明確にする修正合意として歓迎したい。 もう一つの労働契約法案は、パートや派遣など就業形態が多様化しているのを踏まえ、働き方の基本的なルールを定めるのが狙い。有期雇用の労働者は「やむを得ない事由がある場合でなければ」契約期間中に解雇できない、としている。契約法案については、解雇や賃金カットなどで紛争の増加が背景にある。 政府、与党は会期を延長する方針で、両法案は今国会中の成立が確実になった。一方、労働基準法改正案は、与野党の調整が難航し、今国会での成立は難しい状況だ。月八十時間超の残業をした場合の割増率を現行の25%以上から50%以上に引き上げる政府案に対し、民主党はすべての残業を対象とするよう要求している。長時間労働やサービス残業がまん延しているだけに、こちらも修正協議を期待しよう。 政府は、今年五月に成立した改正パート労働法など一連の法改正を機に、格差問題に全力を挙げて取り組んでもらいたい。』 . |
| 2007.11.01 | ☆療養病床削減 患者が不安抱かぬよう 1日、北海道新聞→ 『慢性病の高齢者らが長期入院する療養病床の削減計画の素案を道がまとめた。 道内二万七千床の療養病床のうち三割の八千七百床を二○一一年度末までに減らし、介護施設への転換を目指す。 「療養病床の患者の半数は治療の必要がない」と厚生労働省が昨年、医療費抑制を目的に病床の削減方針を示したのを受け、道が医療機関の意向を調査したうえで検討を進めてきた。 国の基準を当てはめると、道内では五割近い削減が必要になる。 だが、北海道は広大で、特に冬場の通院は大きな負担となる。 地元の事情に配慮して削減幅を三割に抑え、一定の病床を確保しようとする道の判断はある程度評価できる。 だとしても、「計画ありき」で機械的に削減すべきではない。患者の「受け皿」を整え、円滑な移行を確かめながら進めることが大切だ。 療養病床には医療保険適用の「医療型」と介護保険適用の「介護型」がある。国は一一年度末までに、二十五万床ある医療型を十五万床に削減し、十二万床の介護型を全廃する方針だ。 併せて、療養病床を再編して老人保健施設や有料老人ホーム、ケアハウスなど居住型介護施設への転換を図り、軽度の患者を移行させる考えでいる。 医療コストの低い介護施設や在宅の療養に切り替えれば医療費が減ると国は踏む。課題は受け皿の確保だ。 転換促進のため、国は融資制度の新設や施設基準緩和といった支援策を取りつつあるが、来春の介護報酬改定時まで詳細が決まらない措置が多い。 採算が取れるのか不透明で、道の調べでも、対象の医療機関のうち介護施設への転換を考えているのはまだ一割だ。二の足を踏むのも分かる。 療養病床削減に向けて、国は昨年七月、医療の必要性の低い療養病床の患者の診療報酬を引き下げた。 その結果、療養病床は減り始めた。退院させられる患者が出ている。採算が取れずに廃業した病院もある。 療養病床から介護施設に転換したところの実態はどうなのか。患者は安心して療養を続けているのだろうか。 国は都道府県と連携して実情を追跡調査し、削減計画に無理があるならば見直すべきだ。 北海道は高齢者一人当たりの医療費が都道府県で二番目に高く、在宅死亡率が9・6%と全国で最も低い。 家庭や地域での介護力が弱く、「社会的入院」が多いことを裏づける数字でもある。居住型介護施設を含めた在宅医療の拡充は、北海道だけではなく全国共通の課題だ。 とはいえ、国の財政事情を優先して療養病床の削減を進めるのはどうか。 患者受け入れの見通しが立たぬまま施策が先行し、行き場を失う高齢者が出るようでは困る。』 . |
| 2007.10.29 | ☆抜本的な再検討も視野に/高齢者医療 29日、神戸新聞→ 『来年度からの実施が迫る高齢者の医療費負担増が、期間を限って凍結や減額される見通しとなった。暫定的な緩和策だが、高齢者にとっては朗報に違いない。 医療制度改革の一環として、高齢者に自己負担増を求める予定の新たな制度は、こんな内容だった。 七十-七十四歳の窓口負担は、世帯年収が五百二十万円以上なら三割のままだが、未満では一割が二割に引き上げられる。また、七十五歳以上の加入を義務付ける「後期高齢者医療制度」を新設し、本人から健康保険料を徴収-などである。 ところが、今夏の参院選で与党が惨敗し、地方や弱者へ配慮する政策の必要論が急浮上した。このため福田首相の指示で、負担増の凍結を検討していた。 与党で固まった緩和策は二つある。一つは七十-七十四歳の窓口負担増を来春から一年間凍結する。対象者は約六百万人とみられる。もう一つは、七十五歳以上の新健保の保険料徴収を半年間行わず、凍結解除後も半年間は保険料を七-九割程度減額する。ただし、対象となるのは会社員らの子息に扶養されていて新たに保険料負担が生じる約二百万人で、七十五歳以上人口の15%程度が見込まれる。 こうした緩和策に伴う財政の負担分は一千億円を超える。今後は、この穴埋めを補正予算で対応するのか、再び制度改正をするのかが焦点となる。 あくまでも暫定的な措置であり、期限が切れた後どうなるかは見えてこないが、国民の反発を受けての一時しのぎではなく、制度改正の是非も含めて再検討する姿勢が要るのではないか。 日本は六十五歳以上が五人に一人を超え、高齢化率世界一位である。財政面だけをとれば、高齢者の医療費負担増が避けられそうにはない。しかし、生活の厳しい「高齢弱者」へは慎重でなければならない。 その点、国の医療費削減政策は、やや強引な印象が免れない。特に、改正による高齢者への負担増は性急過ぎる印象だ。 医療費をGDP(国内総生産)比でみると、日本は先進国の中で英国に次いで低く、国際的に決して高くない。英国はいったん医療費圧縮を図ったが、医師の国外流出が相次ぎ、一転して医療費増額政策を進めている。そんな実例にも関心を向けたい。 高齢者が窓口で負担する医療費をどうするかは、社会保障のあり方を問うことである。国家財政の立て直しの進め方にもつながる大きな問題だ。弱い立場の人を視野に入れ抜本的に論議する必要がある。』 . |
| 2007.10.20 | ☆給付と負担 消費税の「封印」が解かれた 20日、読売新聞→ 『消費税率の引き上げ論議に、長くかけられていた「封印」がついに解かれたようだ。 内閣府が、年金、医療などの社会保障給付と財政や負担の関係について、3種類の将来試算を経済財政諮問会議に提出した。 税と社会保険料を合わせた国民負担を増やさなければ、現在の給付水準を維持できず、財政赤字も拡大する、という冷厳な事実を突き付けている。 福田首相は、「問題を先送りすれば、(増税か給付削減かの)選択肢はさらに厳しくなる」と述べ、あえて負担増を巡る議論に踏み込む決意を示した。 「在任中、消費税率は引き上げない」と宣言した小泉首相、「歳出削減を徹底し、できれば消費税率引き上げを回避したい」を基本方針とした安倍首相に比べ、責任ある態度と言えよう。 3種類の試算のうち、注目されるのは「負担増で給付を維持するケース」と「給付削減で負担を維持するケース」を比較し、2025年度までの国民負担と給付水準の変化を計算したものだ。 前者では、25年度には国民負担が高成長下で11兆円、低成長下で12兆円増えるうえ、財政赤字の拡大を防ぐために、合計で14〜29兆円の増税が必要になる。 後者の場合、25年度の給付は現状より実質約3割削減される。赤字抑制に8〜24兆円の増税も要る。どちらも、厳しい国民生活を覚悟しなくてはならない。 11年度までの中期的な財政を展望した別の試算では、「歳出を11・4〜14・3兆円削減する」とした従来方針に加え、「14・3兆円削減したうえで、08年度から歳出を毎年1兆円積み増すケース」の財政状況を見通した。 その場合、国と地方を合わせた基礎的財政収支の赤字を解消するのに、低成長なら6・6兆円の増税が必要とした。 内閣府が財政の将来試算の中で、増税の必要額を明示したのは初めてだ。医師不足、介護給付増大などで揺れる社会保障制度を守るため、一定の歳出増も検討せざるを得ない状況になっている。 現実を直視した試算は「高成長による税収増と歳出削減で財政を再建できる」とする一部の楽観論の退潮を物語る。 ただ、試算をする際の増税の具体策は「所得税と消費税が半々」と仮定した。増税の影響が現役世代に偏る所得税を引き上げるのは難しい。ここは、消費税中心の増税と仮定すべきだった。 民主党は消費税率を引き上げなくても社会保障制度を維持できるとしている。試算が出ても、その政策に変わりないのか。痛みの少ない負担増と給付削減の組み合わせを、与野党で探るべきだ。』 . |
| 2007.10.11 | ☆高齢者医療 根本から制度見直しを(社説) 11日、中国新聞→ 『来春予定されている高齢者の医療費負担増の凍結が与党内でほぼ固まった。七十〜七十四歳の窓口負担の二割への引き上げ(現行一割)と、会社員の扶養家族になっている七十五歳以上からの新たな保険料徴収は、先送りされることになりそうだ。 先の自民党総裁選で、福田康夫首相は「お年寄りに安心を」と公約に掲げていた。凍結はその具体策の一つである。老年者控除の廃止、納税額で決まる介護保険の保険料のアップなど、急増している高齢者負担を緩和するのが目的だ。ほっとしている高齢者もいるかもしれない。 検討を進めている与党プロジェクトチームは、九日の会合で、凍結期間を半年とするか、一年とするかを話し合った。法改正が必要となる一年以上は、国会審議などの日程上難しいため、見送った形だ。先送りされても、わずかな期間にすぎない。 凍結に伴う財源を、どこから出すか決まっていないのも気に掛かる。厚労省の試算によると、七十〜七十四歳の窓口負担を一割のままにした場合、国は年間約千三百億円の財源確保が必要となる。七十五歳以上の新たな徴収分も、約四百億円を国が肩代わりすることになるという。 舛添要一厚生労働相は補正予算を念頭に置いているようだ。ただ、財政健全化へ向けて、歳出削減を進めてきた政府の方針には反することになる。国民の目を意識した、場当たり的なばらまきといった批判もある。 もともと、高齢者の医療費負担引き上げを柱とする医療制度改革は、高齢者医療費の増加で苦しくなる保険財政の安定化と、現役世代との負担のバランスを図るのが狙いだった。七十歳以上で現役並み所得のある世帯は、昨秋先行して、三割負担となっている。 しかし、世代間の負担公平というだけで、高齢者医療をとらえていいのだろうか。 二〇〇七年版高齢社会白書によれば、高齢者間の所得格差は現役世代間より大きいという。年金などで、ぎりぎりの生活をする世帯もある。そうした人たちにとって、窓口負担の引き上げは死活問題である。 「凍結」を契機に、制度改革のあり方自体を抜本的に見直すべきであろう。給付と負担をどうするか。小手先の対応ではなく、長期的な視点から議論を深めていく必要がある。』 . |
| 2007.10.11 | ☆自立支援法 早急な見直しを求める 11日、信濃毎日新聞→ 『昨年春に施行された障害者自立支援法の問題点がまた明らかになった。 施設などを出た障害者が地域で暮らすための受け皿となるグループホームやケアホームの中で、収支が悪化している事業所が多いことが、長野県の調査で分かった。 このままでは、赤字などで運営が立ちゆかなくなる施設が出てくる可能性もある。労働条件の悪化でサービスが低下し、利用者にとっては居場所や自立の機会が失われることにもなりかねない。 福田首相は総裁選立候補の際、支援法の抜本的見直しを公約に盛り込み、民主党も先ごろ同法の改正案を提出している。与野党の立場を超え、障害者と福祉の現場にかかわる人びとの立場に沿った、使い勝手のいい法に改正するべきだ。 調査は県内でホームを運営する98の事業所を対象にアンケート形式で行い、69事業者から回答を得た。支援法施行直前と施行されてほぼ1年がたった、ことし3月で収支状況などを比較した。 それによると、収支が悪くなった事業所は29カ所、よくなった所は26カ所で、変わらないが14カ所だった。悪くなった理由で一番多かったのは、支援法によって事業所に入る報酬が定額の月払いから障害者の利用状況に応じた日払いに変更されたことだった。 障害の程度が見込みよりも低く認定されて収入が減ったり、職員がさらに必要になったりするなど、法施行による制度上の変化を理由に挙げる所も多い。 いま、福祉の現場ではパートなど非正規職員が増えている。意欲のある人材が働ける雇用環境をつくり出していかなくては、障害者が暮らしやすい社会を実現するのは難しい。福祉サービスの担い手と受け手の問題は表裏一体である。 ことしの障害者白書で、障害者の8割が、もっと働けるようにするためにはきちんとした法整備が必要と感じていることが明らかになっている。改正障害者雇用促進法や支援法では不十分と感じている実態が浮き彫りになった。 支援法は身体、知的、精神と、障害ごとにばらばらだった従来の支援を一本化し、不便を強いられてきた障害者が利用できるサービスの格差縮小を目指すものだ。ただ、その結果、所得に応じていたサービスの利用料は原則1割負担となり、法施行前より負担が重くなった人が増えた。サービス利用をやめたり、減らしたりする人が少なくないことも大きな問題となっている。 障害者の自立促進という、法の趣旨が損なわれる状態をこれ以上、放置しておくわけにはいかない。』 . |
| 2007.10.08 | ☆高齢者医療費 限界に来た機械的な削減手法 7日、読売新聞→ 『社会保障費を機械的に削減してきた手法が、限界に来ているということだろう。 政府・与党は、高齢者医療費の窓口負担の引き上げなどを見直す方針だ。 昨年成立した医療制度改革関連法により、来年4月から、70〜74歳の高齢者の窓口負担が1割から2割へ引き上げられる。75歳以上についても独立した医療保険を創設し、一部の人には新たな保険料負担が生じる。これらの実施をいったん凍結するという。 対象となる高齢者は歓迎するだろう。問題は財源だ。凍結するには、1000億円規模の財政措置が必要になる。政府・与党は、今年度の補正予算で対応する方向だが、今のところ、税収の増加を期待する以外に財源の見通しがない。 政府・与党はこれまで、民主党の政策の多くを「財源の裏付けがない」と批判してきた。財源の手当てを説明できないなら、同じそしりを免れない。 社会の高齢化が進行する中で、高齢者にも、医療費の自己負担増を求めざるを得ない。現役世代並みの所得がある高齢者にはすでに、先行して3割負担が実施されている。 ただ、現役並み所得に満たない高齢者の窓口負担を一律に引き上げることに対しては、与党内でも、当初から異論があった。高齢者は経済力格差が現役世代以上に大きく、負担の求め方にきめ細かな段階を設定すべきではないか、との意見である。 そうした経緯を念頭に置いて再検討する、ということであろう。 その場合、高齢者に求める負担のあり方を見直すのかどうか。負担を軽減するというなら、穴埋めする財源のメドも同時に示してもらいたい。単に負担増の先送りというのでは、総選挙を意識したばらまきと言わざるを得ない。 社会保障費は、高齢化によって年に約8000億円ずつ自然に増える。小泉政権以来、予算編成時に、この伸びを毎年2200億円抑制するというノルマが課されている。高齢者の窓口負担引き上げもその一環として行われた。 社会保障費が野放図に膨張せぬよう、厳しく監視することは必要だ。 だが、超高齢社会に必要な予算は、きちんと確保しなければならない。少子高齢化の下で、現役世代に負担を求めることにも限界がある。高齢者も含めて、広く薄く負担し合うしかあるまい。 高齢者医療費の見直し案が浮上したことによって、消費税率引き上げが避けられないことが、より明白になったのではないか。』 . |